- こんな植物知っていますか?
- コオニタビラコ
- イヌノハナヒゲ
- クソニンジン
- コソグリノキ
- フリソデヤナギ
- ウグイスカグラ
- ママコノシリヌグイ
- ハキダメギク
- ヘクソカズラ
- ブタノマンジュウ
- アキノウナギツカミ
- ヤブレガサ
- オオイヌノフグリ
- ジゴクノカマノフタ
- ヘソクリ
- ヒキオコシ
- バアソブ、ジイソブ
- キツネノマゴ
- シビンウツボ
- キツネノカミソリ
- ライオンゴロシ
- ヤブジラミ
- ブタクサ
- ヒキノカサ
- ウマノアシガタ
- タカサブロウ
- コゾウコロシ
- ノミノフスマ
- ヌスビトハギ
- ワルナスビ
- ナベワリ
- ボロギク
- スズメノチャヒキ
- シモバシラ
- オランダキジカクシ
- カニコウモリ
- ステゴビル
- スブタ
- カクレミノ
- バクチノキ
- ドロノキ
- ナナメノキ
- コシアブラ
- ボロボロノキ
- ヘビノボラズ
- オニシバリ
- バリバリノキ
- キソウテンガイ
- ナンジャモンジャ
- ミソナオシ
- ショウベンノキ
- リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ
こんな植物知っていますか?
コオニタビラコ
食用である春の七草の一つの、コオニタビラコは別名ホトケノザです。これはキク科に属します。ただし、現在ではホトケノザという名前は、初春に花をつける野草のシソ科のホトケノザについて用いられています。シソ科のほうは食べられません。
コオニタビラコのタビラコを漢字で書くと「田平子」です。田んぼで葉を放射状に平らに広げている様子を表しています。オニタビラコを漢字で書くと「鬼田平子」となります。鬼は大きいことを意味します。「田平子」の中でも大きなものを、そう呼んでいるのです。コオニタビラコは「小鬼田平子」です。「鬼田平子」よりも、小さいことを意味します。ややこしいですね。
メモ
キク科の越年草です。本州、四国、九州に分布します。田の畦や川岸などに自生します。高さが4センチから20センチ程度。春にタンポポに似た黄色い花をつけます。ホトケノザという名前は、放射状に広げた葉が仏様が座る台座に似ていることから命名されました。ホトケタンポポ、カワラケナなどの別名があります。
語句
越年草……えつねんそう – 北半球の温帯域に生育する草本植物で,秋に発芽し,冬を越して春になって開花結実枯死する冬緑一年草を一般には二年草という。ムギに伴った地中海地方原産の雑草に多く見られる生活型である。しかし,もし二年草を厳密に定義すれば,暦年で2年かかって生育開花枯死する植物(biennials)になるであろう。それに近いもの,例えば春に発芽,翌年の夏に開花し,秋に枯死するようなものは,オオマツヨイグサ集団の中の特別な個体に見られるが,多くはない。
イヌノハナヒゲ
植物の名前にはイヌゴマやイヌビワなど、犬を冠したものが多いです。イヌゴマ、イヌビワのイヌは、その植物が人間の役にたたないことを意味しています。イヌの名のついた植物名の多くはその意味で使われています。逆かと思いましたが、そうではないのですね。役立たずでした。
イヌノハナヒゲと名付けられた野草があります。この名前のイヌはどうなのでしょう?
これは役に立たない、という意味ではなく、文字どおり犬の意味なのです。すなわち、この野草の細い茎や葉を犬の鼻ヒゲに見立てたのです。ちなみに、同じカヤツリグサ科でイヌノハナヒゲに似た多年草に、植物学者の牧野富太郎はトラノハナヒゲという名をつけています。
メモ
カヤツリグサ科の多年草です。本州、四国、九州に分布します。日当たりのよい湿地に生えます。高さ50センチから130センチに伸びます。茎は直立していて細長く、葉も細いです。本種の仲間はよく似ていて、区別がつきにくいのです。ホシクサ科にイヌノヒゲ、シロイヌノヒゲと名付けられた野草があります。
語句
多年草……たねんそう – 草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
クソニンジン
独特の強いにおいはありますが、クソのようなにおいではないです。それでもクソ呼ばわりされて、まったくひどいですね。
この植物はヨモギの仲間で、ある書籍には、全体に臭気があると書かれています。ですが、そのにおいは決していやなにおいではない、といった意見が多いということです。
外国の書籍の中には、そのにおいを甘い香り(sweet scented)と書いてあるものがあるそうです。
昔の人には悪臭と感じられたのでしょうか。クソニンジンのニンジンは、この植物がニンジンの葉に似ているので命名されています。
メモ
キク科の一年草です。アジアから東ヨーロッパ原産です。北半球の温帯から熱帯にかけて広く分布します。
日本では道端や市外の荒れ地などに自生します。高さが1メートルから1.5メートルほどになります。花期は8月から10月。大型の円錐花序に黄色の頭花をつけます。江戸時代の本草書にその名が出ています。
語句
一年草……春に発芽し、その年の内に生長、開花、結実を終えて枯れる植物。イネ・ナス・アサガオ・ヒマワリなど。一年生植物。一年生草本。
円錐花序列……えんすいかじょ – 総状花序の一つ。花序の軸が数回枝分れし、それぞれの分枝が総状花序となる。多くの場合全体として円錐状を呈する。ナンテンの花序はその例。→花序
頭花……とうか – 頭状花序全体を一つの花と見たてていう語。キク科植物などで用いられる。頭状花。
本草書……ほんぞうしょ – 中国の,薬物についての学問をいい,薬物についての知識をまとめた書を本草書という。薬物についての研究は本草書を中心にして行われ,その成果はこれらの書のなかに蓄積されてきた
コソグリノキ
サルスベリは夏の代表的な花木です。このサルスベリはコソグリノキという妙な名の別名があります。なぜ、そんな名前がついたのでしょう。
江戸時代中期、貝原益軒の『大和本草』(やまとほんぞう)に、この木について「其(その)樹の本(もと)を久しくかけば枝皆うごく。故に本草に、怕痒樹(はくようじゅ)といふ」とあります。
怕痒樹とは、痒(かゆ)さを怕(おそ)れる木という意味です。
根元をさすったりすると、枝葉が揺れるといいます。それが痒がって動いているように見えることから怕痒樹という名がつきました。コソグリノキという名もそこからきています。
メモ
ミソハギ科の落葉小高木です。中国南部原産で日本にいつごろ入ってきたのかははっきりしないそうです。江戸時代初期という説はあります。
木肌がなめらかで、木登りが得意なサルもすべりそうだということから、サルスベリの名がつきました。サスリノキ、ワライノキなどの別名もあります。
語句
貝原益軒……かいばらえきけん – 江戸前期の儒学者・教育家・本草学者。名は篤信。損軒とも号。筑前福岡藩儒。松永尺五・木下順庵らを師とし、朱子学を奉じたが、晩年「大疑録」を著し朱子学への疑問を表明。著書は膨大で、特に教訓書は身分を越えて受容され、大きな影響を与えた。他に「慎思録」「大和本草」「益軒十訓」など。(1630~1714)→益軒十訓 →女大学
怕痒樹(はくようじゅ)……サルスベリとも読む。
落葉小高木……高木(こうぼく)は、植物学の用語で、木本のうち、樹高が 5mを超える植物のことである。10m未満のものを小高木、20mを超えるものを大高木と呼ぶこともある。広義(一般)では、高木(こうぼく、たかぎ)は丈の高い(人の背丈以上の)木をいう。ある季節に定期的に葉を落とす植物の性質のことである。枯れた葉がすぐに落ちず、翌年の春まで残る種類もある。
フリソデヤナギ
フリソデヤナギ(振袖柳)という名は、なかなか風情があります。振袖とどんな関係があるのでしょうか。
明暦3年(1637年)の1月、江戸で大火がありました。いわゆる、明暦の大火で、振袖火事とも呼ばれています。
火事の火元は本郷丸山の本妙寺で、この寺はのちに巣鴨に移転しました。大正13年(1924年)、柳の研究家の木村有香博士が巣鴨のこの寺の境内で新種の柳を発見し、振袖火事にちなんで、その柳をフリソデヤナギと名付けたといわれています。
メモ
ヤナギ科の落葉低木です。ネコヤナギとバッコヤナギの雑種とされ、主に生花用として栽培されています。
高さが2メートルから3メートルです。牧野富太郎はフリソデヤナギという名は、茂った葉が垂れ下がった様子を振袖にたとえたものとしていますが、この牧野富太郎の説は誤りと見られています。
語句
明暦の大火……めいれきのたいか – 明暦3年1月18日(1657年3月2日)から明暦3年1月20日(1657年3月4日)までに江戸の大半を焼いた大火事。振袖火事・丸山火事とも呼ばれる。
木村有香……きむらありか – ヤナギ科の分類を大成した植物学者として知られているとともに、旧制第七高等学校造士館に在学中に原始的な形態を持ち生きている化石として知られるキムラグモを発見したことでも著名である。様々な地域の野生のヤナギを個体識別し、季節ごとに標本を採集し、同一個体から得られた標本を比較することで葉の形態の季節変異の著しいヤナギ科の分類の確立に努めた。
落葉低木……らくようていぼく – 秋の低温期になると葉が枯れて落ち、翌春に新しい葉を生じる樹木。低い木。ふつう高さ約2メートル以下の樹木。主幹がはっきりせず、根ぎわから数本に分かれて出るものが多い。灌木 (かんぼく) 。
牧野富太郎……「日本の植物学の父」といわれ、多数の新種を発見し命名も行った近代植物分類学の権威である。その研究成果は50万点もの標本や観察記録、そして『牧野日本植物図鑑』に代表される多数の著作として残っている。小学校中退でありながら理学博士の学位も得て、生まれた日は「植物学の日」に制定された。
ウグイスカグラ
ウグイス(鶯)とカグラ(神楽)の組み合わせが奇妙です。この木はなぜこんな名前になったのでしょうか。三つの説があります。
(一)この木にウグイスがやってきて、前後左右に踊りはねるような動きをします。それが神楽の踊りに似ているからという説。
(二)ウグイスが姿を隠すのに適しているので、ウグイスガクレが転じたものという説。
(三)この木はウグイスを捕らえるのに適しているので、ウグイスの狩り場を意味するウグイスカラクリが転じたという説。
どの説が当たっているのでしょうか。誰にもわかりません。
メモ
スイカズラ科の落葉低木です。北海道南部、本州、四国、九州に分布します。野原や山地に自生し、庭木としても植えられています。
高さが1.5メートルから3メートル。花期は4月から5月。葉腋から下垂する花柄の先に淡紅色の漏斗状(ろうとじょう)の花をつけます。果実は赤く熟して甘くておいしいです。
語句
葉腋……ようえき – 葉が茎や枝と接続している部分。葉の付け根。
ママコノシリヌグイ
昔は紙はたいへん貴重なものでしたので、植物の葉が便所紙として利用されていました。ですが、どんな植物の葉でも便所紙のかわりになるわけではありません。たとえば、このママコノシリヌグイは葉の裏や茎にトゲがあり、尻ぬぐいには適しません。これでお尻をふいたら痛くて飛び上がります。
実子ではない子を継子(ままこ)といいます。継母(ままはは)が継子をいじめることはよくあります。トゲのあるママコノシリヌグイで継母が継子のお尻をふいていじめる。そんな連想からママコノシリヌグイという名がつけられたといわれています。ちょっと暗い話ですね。
メモ
タデ科の一年草(一年以内に発芽・生長・開花・結実を完了し、枯死する草本植物)です。日本各地の原野や水辺に分布します。茎は蔓状(つるじょう)で高さが1メートルから2メートル程度です。茎と葉の裏にトゲがあります。花期は8月から10月。茎先に淡紅色の小花が集まって咲きます。何とも怖い名前を付けられていますが、その花は金平糖のように愛らしいです。別名、トゲソバ、ハリソバと呼ばれています。
ハキダメギク
ゴミ捨て場(掃き溜め)に咲く菊ということでハキダメギク。なぜこんな名前が付けられたのでしょう?
この植物は空き地、掃き溜め、路傍(ろぼう-道ばた)などで生育します。ハキダメギクの命名者は植物学者の牧野富太郎です。ある日、掃き溜めに見たことのない草が生えているのを発見しました。その場にちなみ、ハキダメギクと命名したそうです。その掃き溜めの場所は、小石川植物園(東京大学の付属植物園)といわれています。
メモ
キク科の一年草です。熱帯アメリカ原産の帰化植物です。高さが10センチから40センチ。葉は対生で、茎葉ともに毛が多いです。夏から秋にかけて、白色の舌状花と黄色の筒状花からなる可愛らしい花をつけます。しかし名前のせいで、その花まできたならしく思われてしまう、かわいそうな花です。名前を変えてやればいいのに。
語句の説明
一年草……種子から発芽して一年以内に生長して開花・結実して、種子を残して枯死する植物。
対生……たいせい-葉が一つの節に一対ずつ生じること。
舌状花……せつじょうか-キク科植物などの頭状花序をつくる小花のうち、花冠が合着して舌状になるもの。タンポポの小花はその例。
筒状花……とうじょうか-キク科の頭花を構成する小花(しょうか)の一種。花弁の大部分が合体して管状をなすもの。キク・アザミの小花の類。管状花(かんじょうか)ともいう。
ヘクソカズラ
ヘクソカズラは夏に可愛い花を咲かせますが、この草花は悪臭がするのです。葉や茎をつまんだりすると、屁糞(へくそ)に似たようなにおいがします。これが名前の由来となります。万葉集にこの草花を詠んだ歌がありまして、「ヘ」のついていないクソカズラとして登場します。ヘクソカズラは古くはクソカズラと呼ばれていたそうです。のちに、その悪臭を強調するように「ヘ」が加えられ、ヘクソカズラと呼ばれるようになりました。クソだけでは物足りなかったのでしょうか、それにしてもひどい名前ですね。
メモ
アカネ科の蔓性多年草です。日本各地の草原、藪、道ばたなどに生えています。茎は細く長く、左巻にのびていき、他のものに絡みます。夏に筒状の愛らしい花をつけます。その花が早乙女がかぶる笠に似ていることから、サオトメバナとも呼ばれています。こっちの名前を定着してやればよいのに。
語句の説明
早乙女……さおとめ-田植えをする若い女性
ブタノマンジュウ
ブタノマンジュウという植物はシクラメンのことです。英語でこの花をsowbreadといいます。これは「豚のパン」という意味です。地中海の沿岸地方がシクラメンの原産地です。シチリア島の野生地でブタがシクラメンの地下茎を食べ荒らしていたことから、その名前がついたといわれます。シクラメンが日本入ってきたのは明治時代です。英語名を和訳してブタノマンジュウと命名されましたが、一般には定着しませんでした。学名のシクラメンの名前で通用しています。ブタノマンジュウだったら、名曲「シクラメンのかほり 布施明/小椋佳」は、この世に生まれなかったことになりますよね。「真綿色したブタノマンジュウほど……」では笑っちゃいますよね。
メモ
サクラソウ科の多年草です。観賞用に栽培されています。その葉は円形または心臓形をしています。5つの花びらからなり、開花すると、花柄のほうへ反り返ります。その姿がかがり火の炎を連想させることから、植物学者、牧野富太郎はカガリビバナと命名しました。しかしその名も定着しませんでした、。
アキノウナギツカミ
草花のなかには葉や茎にトゲをもつものがあります。トゲのある茎を手に持って、ヌルヌルしたウナギをつかめば、つかめるかもしれない、と思ったのでしょう。そんなところから、ウナギツカミと命名されました。初夏に開花する一年草や、秋に開花する別種もあります。秋に開花する別種をアキノウナギツカミと命名しました。
それにしても、トゲのある茎を使用して、ほんとうにウナギをつかめるのでしょうか。残念ながら、真意のほどは定かではありません。
メモ
タデ科に属する一年草です。北海道、本州、四国、九州に分布します。湿地、田んぼの溝、水辺などに生えます。茎には下向きのトゲがたくさんついていて、他のものに引っかかります。葉の裏側にも小さなトゲがあります。花期は7月から10月で、ピンク色の小さな花をつけます。
ヤブレガサ
ヤブレガサという名は、まさにこの野草の姿を上手に表現してます。ヤブレガサの葉は指を開いた手のひら状に深く避けており、破れた傘を思わせます。春は特に、芽吹いたばかりの葉は傘をすぼめたような格好をしており、風情があります。その姿、ヤブレガサがぴったりの名前です。漢名では菟児傘(とじさん)といいます。その裂けた葉を子ウサギの傘になぞらえたのです。キツネノカラカサ(狐の唐傘)とも呼ばれています。
メモ
キク科の多年草です。本州、四国、九州に分布します。森や雑木林のふちなどに生えます。冬に地上部が枯れて、春に傘をすぼめたような形で土中から葉がでてきます。花期は6月から9月で、初夏に花茎がのびて、茎の先に多数の白い頭状花をつけます。その若芽は食用となります。
語句
花茎……かけい-葉をつけないで、先端に花だけをつける茎。根や地下茎から直接のびる。
頭状花……とうじょうか-花軸の先に柄のない花が密生し、一つの花のように見えるもの。キク・アザミ・タンポポなどにみられる。頭花。頭状花序。
オオイヌノフグリ
オオイヌノフグリという名前について、とある植物の本は、雑草につけられた、ひどい名前の代表と評しています。お分かりのとおり、ひどい名前というのは陰嚢(いんのう)を意味するフグリという語を含んでいるからです。
オオイヌノフグリは明治時代半ばに渡米した帰化植物です。その仲間の草が日本には昔からありまして、イヌノフグリ(犬の陰嚢)という名前を持っていました。その実が犬の陰嚢に似ていることから命名されたのです。それよりも花や葉が大きいことから、オオイヌノフグリと名づけられました。早い話、金玉袋です。
メモ
ゴマノハグサ科の越年草です。原産はヨーロッパですが、日本各地の田畑や道端などでごく普通に生えています。早春の代表的な草花です。3月から5月にかけて、青紫色の小さな花をつけます。朝に咲いた花は夕方にはしおれ、そのときに自分の花粉をメシベにつけて、自花受粉します。
語句
陰嚢……いんのう-陰茎の付け根の下にあって、精巣(睾丸こうがん)・副精巣(副睾丸)などを包み込んでいる袋状のもの。ふぐり。
帰化植物……主に人為的な手段により、原産地以外の地域に入り込み定着した植物。日本では、セイタカアワダチソウ・ヒメジョオン・シロツメクサ・アレチマツヨイグサなど
越年草……えつねんそう-北半球の温帯域に生育する草本植物で,秋に発芽し,冬を越して春になって開花結実枯死する冬緑一年草を一般には二年草という。ムギに伴った地中海地方原産の雑草に多く見られる生活型である。しかし,もし二年草を厳密に定義すれば,暦年で2年かかって生育開花枯死する植物(biennials)になるであろう。それに近いもの,例えば春に発芽,翌年の夏に開花し,秋に枯死するようなものは,オオマツヨイグサ集団の中の特別な個体に見られるが,多くはない。
ジゴクノカマノフタ
キランソウという多年草があります。ジゴクノカマノフタはその別名です。地獄の釜の蓋、どうしてこんな名前になったのでしょう? これを用いれば地獄の釜に蓋をすることができるのでしょうか。地獄から逃げられるのでしょうか。
この草花は漢方薬として用いられており、諸病に有効とされています。病気になり、本来なら死んで地獄へいくはずだった人が、この薬草を飲んだおかげで病が治り、死なずにすみました。まさに、地獄の釜に蓋をしたわけです。ジゴクノカマノフタ、この名はそこから命名されたのです。この薬があれば、医者はいらないともいわれます。そこで、イシャゴロシ(医者殺し)という別名も用意されています。
メモ
シソ科の多年草です。本州、四国、九州に分布します。路傍(ろぼう)や山麓などに生えます。標準和名のキランソウは漢名で「金痍小草」と書きます。この命名は、キランソウが痍(傷)に効くとされたことによります。花期は3月から5月で、濃い紫色をした唇形(上唇2裂、下唇3裂)の花を付けます。
語句
多年草……たねんそう-草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
ヘソクリ
植物は薬の効能をもつものがとても多いです。サトイモ科のカラスビシャクもその一つで、漢方ではその塊茎が吐き気止めとして用いられています。このカラスビシャクはヘソクリという別名をもっています。なぜそんな名前がついたのでしょう?
カラスビシャクは塊茎が地下深くにあるため、除去しにくい雑草として嫌われています。しかし、塊茎は漢方薬になりますので、農家の人たちはそれを掘って売り、お金を得て、中にはヘソクリにする人もいました。そんなところからヘソクリという名前が付けられてといわれています。
メモ
サトイモ科の多年草です。北海道以南の各地に分布します。畑や道端にふつうに生えています。仏炎苞をそなえており、カラスビシャク(烏柄杓)という名は、その苞をカラスが使う柄杓(ひしゃく)に見立てたのです。スズメノヒシャク、カラスノテッポーといった別名もあります。
語句
塊茎……かいけい-地下茎の一部がでんぷんなどを蓄え、塊状に肥大成長したもの。ジャガイモ・キクイモ・コンニャクイモなど。
仏炎苞……ぶっぽうえん-穂花序を包む大形の包(包葉)。本来、包は1個の花に対するものであるため、1個の花序に対する仏炎包は総包に相当する。仏炎包はサトイモ科にみられ、ミズバショウでは白く、カラジウム(ニシキイモ)では紅色などを呈して美しい。
ヒキオコシ
ヒキオコシは別名、エンメイソウともいいます。
弘法大師が諸国行脚のさいに、山の中で腹痛に苦しむ瀕死の人に出会い、弘法大師がこの野草を食べさせたところ、たちどころに病気が治ったという言い伝えがあります。
そこから、この野草はエンメイソウ(延命草)と呼ばれるようになったそうです。
この野草は弘法大師伝説と関連し、古くから薬草として用いられ、瀕死の病人を起き上がらせる(引き起こす)薬効があるといわれています。
ヒキオコシという命名はそこからきているのです。
メモ
シソ科の多年草です。北海道西南部、本州、四国、九州に分布します。
山地の草原や草藪に自生します。茎は四角形で下向きに細毛が密生して、葉は卵形です。秋に淡紫色の筒状唇形の花をつけます。
葉や茎は陰干しして煎じ、健胃薬として用いられます。消化不良、食欲不振などにも効果があります。
バアソブ、ジイソブ
人の顔に茶色の斑点ができることがあり、それをそばかすといいます。植物にもそばかすのようなものができることがあり、それが植物の名になっています。
バアソブ、ジイソブがそうです。
バアソブのバアは婆、ジイソブのジイは爺で、ソブは木曽地方の方言でそばかすのことです。つまり、バアソブ、ジイソブは婆さんのそばかす、爺さんのそばかすという意味なのです。
この二つの野草は両方とも鐘の形をした花を咲かせます。その花の内側に斑点模様があります。
それを、婆さんのそばかす、爺さんのそばかすにたとえたのです。
メモ
キキョウ科の茎性の多年草。北海道から九州まで全土に分布します。
野山の林などに生えます。バアソブという名は標準和名ですが、ジイソブはツルニンジンの別名で、ツルニンジンが標準和名です。バアソブの花はジイソブの花よりもやや小柄です。上記のイラストは右がジイソブです。
語句
多年草……たねんそう-草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
標準和名……生物の種などの日本語での正式な名称。学名のこと。
キツネノマゴ
キツネノマゴと名付けられた野草は、漢字で書くと「狐の孫」です。この名はいったいどこからきたのでしょう?
キツネノマゴはキツネノマコが転じたもという説があります。ママコナ(飯子菜)という一年草があります。キツネノマゴはママコナと姿がよく似ています。
ですが、どうもママコナよりも品がよくないのです。
キツネは人をだますといわれています。
似てはいますが、品がよくないのを、キツネで表し、キツネノママコ(このママコはママコナの略です)と呼んだのが転じて、キツネノマゴになったといいわれています。
メモ
キツネノマゴ科の一年草です。本州、四国、九州に分布します。
野原や道端などに自生します。高さは10センチから40センチくらいになり、茎や葉に短い毛が生えています。
花期は8月から10月、唇形の淡紫色の可愛らしい花を咲かせます。近似種に葉の小さなものがあり、キツネノヒマゴと名付けられています。
語句
一年草……春に発芽し、その年の内に生長、開花、結実を終えて枯れる植物。イネ・ナス・アサガオ・ヒマワリなど。一年生植物。一年生草本。
シビンウツボ
とんでもない名前の植物ですね。
中には昆虫を捕らえて、その栄養分を吸収する植物がいます。食虫植物と呼ばれていますね。
捕獲の仕方はいくつか方法があり、ウツボカズラ科の食虫植物は葉が袋状になっていて、そこに虫を誘い込んで捕らえます。
ウツボカズラ科は70種類以上あり、その一つにシビンウツボというひどい名前をつけられた食虫植物がいます。
補虫嚢(ほちゅうのう-虫を捕らえる袋じょうの葉)の形が小便を取るときの溲瓶(シビン)に似ているのでその名がつきました。いわれてみれば確かに似ています。
どれもシビンに似ているといえば、似ているのですが。
メモ
ウツボカズラ科の食虫植物です。ボルネオ島の標高2000メートル以上の山地に分布します。
ウツボカズラ科は70種以上あり、すべての種類が葉の先端部に壺形(つぼがた)の補虫嚢をもっています。
その補虫嚢は葉柄の先端部が袋状にふくれたもので、入口をおおうように蓋もついています。
語句
葉柄……ようへい-葉の一部で、茎・枝につながる柄(え)のような所。
キツネノカミソリ
キツネノカミソリは夏が終わる頃に、雑木林のへりなどで、黄色い花を咲かせます。
キツネノカミソリとは妙な名前ですね。
カミソリの名は細長い葉をカミソリに見立てたものです。
ではなぜキツネなのでしょう。
この野草は寂しくて気味の悪い場所に生えます。それをキツネで表したとか、花の色がキツネの毛色に似ているから、など、諸説あります。
そのほか、この草花の黄赤色の花は炎のように見え、それを狐火に見立てたところから、キツネと名付けたのではないかといった説もあります。
メモ
ヒガンバナ科の多年草です。本州、四国、九州に分布します。
山麓や野原に生えます。ヒガンバナと同じように球根に有毒成分を含みます。
春に葉をだし、夏にその葉が枯れ、そのあと、花茎を伸ばし、黄赤色の花をつけます。キツネノタイマツ、ハコボレクサなどの別名もあります。
語句
多年草……草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
ライオンゴロシ
このライオンゴロシ、実は百獣の王、ライオンを殺してしまうのです。
この植物、いったいどうやって、ライオンを殺すのでしょう。
ライオンゴロシの果実の形がたいへん変わっています。木質で手のひらほどの大きさがあり、何本も突起が伸びていて、先端が鉤爪状(かぎづめじょう)になっています。
それをライオンが踏みつけたりすると、グサリと刺さり、口で抜こうとします。恐ろしいことに、これが唇に刺さって抜けなくなります。
そうなると、食べ物が食べられなくなってしまいます。やがて餓死することになります。そんなことから、この植物はライオンゴロシという和名が付けられています。
メモ
ゴマ科の多年草です。ボツワナ、ナミビア、南アフリカに分布します。
乾燥した地域の砂質土壌に生育しています。その果実の大きさは全長10センチくらいで、多数の種が入っており、鋭いトゲを備えています。それが、大型動物の足の裏に食い込み、他所へと運ばれていきます。
恐ろしい。
語句
多年草……草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
ヤブジラミ
人に寄生するシラミは吸血することから、害虫として忌み嫌われています。そのありがたくないシラミの名を有するヤブジラミという野草があります。
ヤブジラミのヤブはこの野生に生えている藪から名を取ったのですが、ではシラミの名は、なぜつけられたのでしょう?
ヤブジラミの果実は卵状の楕円形で、鉤状に曲がった刺毛(しもう-かたいトゲ状の毛)が密生しています。これが衣類につきやすいのです。シラミも人につきますから、ヤブジラミという名はそこからきています。
メモ
セリ科の越年草です。日本各地に分布します。平地や道端、草原に自生します。
茎は直立し、高さ30センチから70センチほどに伸びます。初夏に白色の小さな花をたくさんつけます。果実の長さは約3ミリで、全体に細かな毛が覆っています。
漢方では種子が強壮剤、消炎剤として用いられています。
語句
越年草……えつねんそう-植物が発芽して開花・成熟し枯れるまで、足かけ二年に及ぶこと。秋に発芽し、春開花するものが多い。ダイコン・ニンジン・ムギなど。二年生植物。二年草。
ブタクサ
多くの日本人が花粉症に悩まされています。
花粉症を引き起こす植物の一つにブタクサがあります。ブタクサは北アメリカ原産の帰化植物で、明治初期に渡米しています。
この植物はAmbrosia(アンブロシア)という学名がつけられています。それは「神の食べ物」という意味で、不老長寿の薬を意味します。
そうした立派な学名を持ちながら、英語ではhogweed(豚の雑草)と呼ばれています。和名のブタクサはその英語名からきており、直訳したものです。
メモ
キク科の一年草です。北アフリカ原産で、日本各地の道端、空き地などに生えます。
渡米したのは明治時代ですが、第二次世界大戦後に急速に分布を拡大しました。
高さは1メートル以上にもなります。花期は7月から10月で、小さな花を種状につけます。
英語ではragweed(ぼろ草)ともいいます。
語句
一年草……春に発芽し、その年の内に生長、開花、結実を終えて枯れる植物。イネ・ナス・アサガオ・ヒマワリなど。一年生植物。一年生草本。
帰化植物……他国から運ばれてきた植物や種子が,その国に土着し自生するにいたったもの。日本の場合,最も古いものとして,イネとともに渡来したと考えられるコナギ,セリ,イヌビエなど,次いでスイバ,ミミナグサ,ハコベ,ハルノノゲシ,ノニガナ,タネツケバナ,オオバコなどがある。これらはもはや,ほとんどがもともと日本固有の植物のようにみなされている。有用植物自生化の例としてはミツマタ,アマなどの繊維植物,シロツメクサ,アカツメクサ,アルファルファ,カモガヤなどの牧草,ツルドクダミのような薬用植物などがある。きわめて最近のものとして,オオアレチノギク,ハルジオン,アメリカセンダングサ,ハイビスカス,アオゲイトウ,ケアリタソウなどが大正年間に,マメカミツレ,ブタクサ,セイタカアワダチソウなどが昭和年間に渡来して急激に自生するようになった。
ヒキノカサ
ことわざに「蛙の面に水」というのがあります。カエルの顔に水をかけても平気なことから、どんな仕打ちにも少しも動じないという意味です。
たしかにカエルは雨に濡れても平気です。ですので、カエルには傘がいりません。
ヒキノカサのヒキとはカエルのことです。カエルに傘が必要ないのに、「カエルの傘」という意味の野草があります。
この野草はカエルが住みそうな場所に生えて、長い花柄の先に黄色の五弁花をつけます。それをカエルの傘にたとえてヒキノカサと名付けました。
カエルには傘が不要ですが、俳諧的な味わいのある名前だと思います。
メモ
キンポウゲ科の多年草です。関東地方以西、四国、九州に分布します。
日当たりのよい湿地に自生します。高さが10センチから30センチ程度に伸びます。花期は3月から5月。黄色い五花弁をつけます。花の大きさは直径約1.3センチ。
花弁の基部に蜜腺があります。近年では育成地の破壊によって減少しているのです。
語句
多年草……草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
ウマノアシガタ
根生葉の形が馬の蹄(ひづめ)の形に見えることから、ウマノアシガタという名になったといわれています。しかし、どうしても馬の足形には見えない、といった意見もあるそうです。
この植物の根生葉は掌上に三裂しており、鳥の足形に似ています。そこで「鳥の足形」と呼ばれていたのを、「馬の足形」と誤読・誤記したことから、ウマノアシガタという名前になった、とう説もあります。
どちらの説が正しいのか誰にもわかりません。
メモ
キンポウゲ科の多年草です。日本各地に広く分布します。山野にごくふつうに見られます。キンポウゲ(金鳳花)とも呼ばれています。
高さが30センチから60センチになります。花期は4月から5月。黄色い五花弁をつけます。オコリオトシという別名もあります。それはこの草が、熱病(おこり)に効くからということらしいです。
語句
根生葉……こんせいよう-根から束生したように見える葉。実際にはきわめて短い茎に多数の葉が地に接して着く。タンポポの類。根出葉。根葉。ロゼット。
掌上……しょうじょう-広げた手のひら
タカサブロウ
漢字では「高三郎」と書きます。まるで人名のような名前ですね。この植物はすでに江戸時代にはその名で呼ばれていました。
由来ははっきりしないそうです。
タカサブロウは古くは「タタラビ」と呼ばれていました。そのタタラビはただれ目を意味する「タタラメ」が転じたものだという見方があります。
この植物がただれ目の治療薬として用いられていたことから、タタラビソウと呼ばれ、それが変化してタカサブロウになった、という説があります。
メモ
キク科の一年草です。本州、四国、九州、沖縄に分布します。道端や田の畦などに自生します。
高さが30センチから60センチくらい。葉は対生し披針形です。
花期は8月から9月。その頭花は白色の舌状花と淡緑色の筒状花からなります。ウナギツカミ、ウナギコロシ、チドメクサ、ヒヤケグサなどの別名もあります。
語句
一年草……春に発芽し、その年の内に生長、開花、結実を終えて枯れる植物。イネ・ナス・アサガオ・ヒマワリなど。一年生植物。一年生草本。
披針形……ひしんけい-植物の葉の形を表す語。細長くて先の方がとがり、もとの方がやや広い形。竹の葉など。
頭花……とうか-頭状花序全体を一つの花と見たてていう語。キク科植物などで用いられる。頭状花。
舌状花……ぜつじょうか-キク科植物などの頭状花序をつくる小花のうち、花冠が合着して舌状になるもの。タンポポの小花はその例。⇔管状花
筒状花……とうじょうか-キク科の頭花を構成する小花(しょうか)の一種。花弁の大部分が合体して管状をなすもの。キク・アザミの小花の類。管状花。
コゾウコロシ
マメ科のシロツメクサは別名コゾウナカセ(小僧泣かせ)ともいいます。商家や職人に奉公する少年は小僧と呼ばれ、庭の草むしりなどもやらされました。
シロツメクサは、引っこ抜いてもすぐに生えてくる小僧泣かせの雑草なのです。コゾウナカセはそこからきています。
さて、コゾウコロシ(小僧殺し)という恐ろしい名を持つ草もあります。
キク科のジシバリの別名です。この雑草も取り除くのに苦労します。泣かされるだけではなく、殺されかねないほど厄介という意味で、その名がつきました。
もっと恐ろしい由来があるかと思いしました。ちょっとホッとしています。
メモ
キク科の多年草です。日本各地に分布します。田んぼや路傍(ろぼう-道のほとり。みちばた)によく生えます。
茎が地面を這いながら伸びて、節々から根を下ろし、地面を縛るかのように見えることから、ジシバリ(地縛り)の名があります。
4月から7月にタンポポに似た直径約2センチの黄色い頭状花をつけます。
語句
多年草……草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
頭状花……花軸の先に柄のない花が密生し、一つの花のように見えるもの。キク・アザミ・タンポポなどにみられる。頭花。頭状花序。
ノミノフスマ
木でできた枠に紙または布を張り、部屋の押し入れや仕切りなどの戸などにするものを襖(ふすま)といいますね。
このノミノフスマはこの襖のことではありません。
このフスマは衾(ふすま)、昔の寝具で布などでつくり寝るときに掛けた夜具のことをいいます。
この植物は長さ1センチほどの小さな葉をつけます。それを蚤の衾(布団)にたとえ、ノミノフスマと名付けました。
蚤が実際にその葉をねぐらにしているわけではありません。あくまで想像からその名をつけました。
メモ
ナデシコ科の一年草、越年草です。日本各地に分布します。田、畑、荒地などに生えます。
高さ5センチかた20センチくらい。花期は4月から10月を長く、五弁の小さな白い花をつけます。
ハコベの花とよく似ていますが、ノミノフスマの花は花弁が萼片よりも長いです。
語句
一年草……春に発芽し、その年の内に生長、開花、結実を終えて枯れる植物。イネ・ナス・アサガオ・ヒマワリなど。一年生植物。一年生草本。
越年草……えつねんそう-植物が発芽して開花・成熟し枯れるまで、足かけ二年に及ぶこと。秋に発芽し、春開花するものが多い。ダイコン・ニンジン・ムギなど。二年草のことをいう場合もある。
萼片……がくへん-多くの場合、花弁(「花びら」のこと)の付け根(最外側)にある緑色の小さい葉のようなものが萼である。 萼は花全体を支える役割を持つ。 また、果実に残り付いている萼は、蔕(へた)と呼ばれることがある。
ヌスビトハギ
ヌスビトハギはハギに似た花を咲かせます。ですので「ハギ」という名がついています。ではなぜ「ヌスビト」(盗人)なのでしょう?
この植物の実には種子が入った部分ごとに区切りがあり、それを節果(せつか)といいます。
植物学者の牧野富太郎の説では、その実の形が、室内に侵入した盗人が、つま先立ちで歩いた際の足跡に似ているということなのです。
その実には鉤状(かぎじょう)の毛が密生し、人や動物の体に付着して運ばれます。それを盗人と見立てたことによる、という説もあります。
メモ
マメ科の多年草です。日本各地に分布します。野山の林縁や道端などに生えます。
高さが60センチから90センチにもなります。葉は卵形で互生です。花期は7月から9月で、葉腋から細長い花序をだし、淡紅色の小さな蝶形の花をつけます。
その実は見方によると、メガネのようにも見えます。
語句
多年草……草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
互生……ごせい-植物の葉が茎の各節に一枚ずつ方向をたがえて生じること。また、そのもの。→対生・輪生◇バラ・ヒマワリなどにみられる。
葉腋……ようえき-葉が茎や枝と接続している部分。葉の付け根。
花序……かじょ-花をつけた茎または枝およびその分枝の様式をいう。分枝の様式については、総状花序と集散花序、または無限花序と有限花序とに大別す。
ワルナスビ
ワルナスビはその名のとおり、ナス科の植物で、北アメリカ原産の帰化植物で、雑草として嫌われています。
ワルナスビという名をつけたのは、植物学者の牧野富太郎です。
千葉県の現在の成田空港付近(三里塚)で、この植物をみつけ、持ち帰って植えました。
凄まじい繁殖力で年々はびこり、取っても取っても生えてきました。ついには、近所の農家の畑まで入ってしまったのです。
それで頭にきた牧野富太郎は、この新種の植物を悪茄子(ワルナスビ)と名付けたのです。
頭にきて付けた名前だったのですね。
メモ
ナス科の多年草です。北アメリカ原産。荒れ地や耕作地に生えます。
茎や葉に鋭いトゲがあり、除草が厄介なのです。
根茎を伸ばして繁殖します。高さ40センチから70センチになります。
花期は7月から10月で、白色または淡紫色の花をつけます。
除草に手を焼くこの野草はオニナスビ(鬼茄子)とも呼ばれています。
語句
多年草……たねんそう-草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
ナベワリ
ナベワリ、人によっては一度も耳にしたことがない植物名かもしれません。そのユニークな名前を持っているのは、山地に自生している多年草です。
ナベワリには「鍋破」という漢字が当てられています。
なぜ鍋が破れると書くのでしょう?
そもそもどうして鍋なのか。
この野草には毒牙あります。葉や花などを舐めると、その毒によって舌が割れるほどの刺激があるということから、「舐め割り」と呼んだのが転じて、ナベワリになったのだろうと、考えられています。
メモ
ビャクブ科の多年草です。関東地方以南。四国、九州に分布します。山地の湿った斜面などに自生します。
高さは50センチほどになります。葉は卵状楕円形で互生です。花期は4月から5月で、淡緑色の花を下向きにつけます。花弁は4枚あり、そのうちの一枚が非常に大木です。
語句
ビャクブ科……単子葉植物の科で、地下茎または球茎をもつ多年草からなり、つる性のものもある。3-4属、30種前後が東南アジアを中心に東アジアからオーストラリアまで、また北米の一部に分布する。
多年草……たねんそう-草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
互生……ごせい-植物の葉が茎の各節に一枚ずつ方向をたがえて生じること。また、そのもの。→対生・輪生。バラ・ヒマワリなどにみられる。
ボロギク
サワギク(沢菊)はキク科の野草です。その名のとおり、沢沿いの林などに生えています。サワギクは涼しさが感じられる名前ですが、別名ボロギクともいわれています。
ボロギクは、ぼろくずとかぼろきれのぼろを意味するのです。
なぜそんな名前がついたのでしょう。
サワギクの花が咲いたあとに、花の部分に毛のようなものが生えます。それを冠毛(かんもう)といいます。
それがぼろくずのように見えることから、ボロギクと呼ばれるようになったという説が、今のところ通説となっています。
メモ
キク科の多年草です。北海道、本州、四国、九州に分布します。山地の湿った山林に生えます。茎は直立し、高さが30センチから120センチになります。
学名(属名)をセネキオ(senecio)といい、これは老人の意味です。花後の冠毛を老人の白髪に見立てたものです。花期は6月から8月で、黄色い花をつけます。
語句
多年草……たねんそう-草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
スズメノチャヒキ
イネ科のカラスムギ(烏麦)は別名チャヒキグサ(茶挽草)ともいいます。
『牧野新日本植物図鑑』に「烏麦は、からすの食べる麦の意味で、茶挽草は、子供がその種を採り、油をつけて、うりの上にのせ、吹けば茶を挽くように廻るので、このようにいう」とあります。
スズメノチャヒキの花穂はこのチャヒキグサに似ていますが、それよりも小さいです。スズメノチャヒキのスズメは小さいことを意味します。
これは小型のチャヒキグサという意味なのです。
メモ
イネ科の一年草。北海道から九州まで日本各地に分布します。日当たりのよい草地や荒れ地に自生します。
高さは30センチから70センチほどになります。全体に白色の軟毛があります。花期は5月から7月。茎頂に円錐花序をだし、淡緑色の小穂をつけます。
小穂は10個前後の小花からなります。
語句
一年草……春に発芽し、その年の内に生長、開花、結実を終えて枯れる植物。イネ・ナス・アサガオ・ヒマワリなど。一年生植物。一年生草本。
茎頂……けいちょう-植物の茎頂と根端の総称。すなわち,茎の先端部にあってその茎の延長部と新しい葉とを作り出す茎頂と,根の先端付近にあってその根の延長部を作り出す根端をいう。
円錐花序……えんすいかじょ-茎への花のつき方の一形式で,複合花序の一種。1本の軸に柄をもった多数の花がつき,下方ほど柄が長くなっているのが総状花序であるが,短い花序をなした枝が,さらに全体として総状の状態に並んで着生するものが複総状花序であって,これを全体の形から円錐花序と呼ぶ。花のつき方として代表的なものの一つで,例は多い。単位となる花序は総状花序の場合 (ヌルデなど) ,穂状花序の場合 (ニワホコリなど) のほか,散形花序が円錐花序の形にまとまる場合 (ヤツデなど) もある。
小穂……しょうすい-イネ科およびカヤツリグサ科植物の花序を構成する一つまたは多数の小花からなる一定のかたちをした構造。多くは見かけ上花のように見える。
シモバシラ
霜柱は土の中の水分が凍って氷の柱となる、冬の自然現象の一つです。野草の中にシモバシラという名で呼ばれている植物があります。
この野草は秋に可愛い花を咲かせ、冬になると地上にでている部分は枯れてしまいます。その枯れた茎の根元に霜柱のような氷の結晶ができることがあります。
それは土壌中の水分が毛細血管作用によって、茎をのぼっていき、茎の一部が裂けて外に流れでて凍結したものです。
シモバシラという名はそこからきています。
メモ
シソ科の多年草です。関東地方以西、四国。九州に分布します。山中の木陰や林縁に生えます。
高さは60センチから70センチていどに伸びます。花期は9月から10月。葉のわきに花穂をだし、唇形の小さな白い花をつけます。他にセキヤノアキチョウジ、カメバヒキオコシなどの野草にも霜柱ができます。
語句
多年草……たねんそう – 草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
林縁……りんえん – 森林の、草地や裸地に接する部分。微気候条件の変化があり、林内と異なる多様な動植物がみられる。
花穂……かすい – イネ・ガマ・カンナなどのように、一本の軸の先に、花が穂のように群がってつく花の並び方。◇俗に「かほ」とも言うが、避けたい。
オランダキジカクシ
オランダキジカクシとはとある植物の別名です。その植物は別の名で野菜として食べられています。さて何でしょう?
正解はアスパラガスです。
オランダキジカクシはアスパラガスの別名なのです。
アスパラガスはヨーロッパの原産で、江戸時代中期にオランダ人によって伝わっていますが、当時は観賞用だったのです。
この新種の植物は同じユリ科のキジカクシという野草に似ていたことから、オランダキジカクシと名づけられました。マツバウドという別名もありますよ。
メモ
ユリ科の多年草です。ヨーロッパの原産です。明治四年(1871年)に北海道開拓使がアメリカから新種を持ち帰り、野菜として栽培を始めました。
茎が食用とされ、グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスがあり、後者は瓶詰めや缶詰にもされています。
語句
多年草……たねんんそう – 草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
カニコウモリ
この名前から、カニような形をした、コウモリをイメージする人がいるかもしれません。しかしカニコウモリはコウモリではなく、植物の名前です。
葉の形がコウモリが翼を広げた形に似ていることから、コウモリソウと名付けられた野草(キク科の多年草)があります。カニコウモリは、このコウモリソウの仲間です。カニコウモリは葉の形がカニの甲羅とよく似ているので、「カニに似た葉を持つ、コウモリソウの仲間」という意味から、カニコウモリと名付けられました。
メモ
キク科の多年草です。近畿地方以北の本州、四国に分布します。針葉樹林の下に自生します。高さが50センチから1メートルに伸びます。葉の形がカニの甲羅に似ており、葉の縁はギザギザしています。花期は8月から9月です。3個から5個の白い筒状花からなる頭花をつけます。カニコウモリソウとも呼ばれています。
語句
多年草……たねんそう – 草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
針葉樹……針状の葉をつける樹木の総称。マツ・スギ・ヒノキ・モミ・イチイなど。⇔広葉樹
筒状花……とうじょうか – キク科の頭花を構成する小花(しょうか)の一種。花弁の大部分が合体して管状をなすもの。キク・アザミの小花の類。管状花のこと。
頭花……とうか – 頭状花序全体を一つの花と見たてていう語。キク科植物などで用いられる。頭状花。
ステゴビル
ニンニク、ニラ、ノビルなどを総称して、ヒル(蒜)といいます。ステゴビルのビルは蒜を意味します。
ステゴといえば、捨子(すてご)が連想されます。そのとおりで、ステゴビルのステゴは捨子の意味です。
ステゴビルはニラやノビルなどヒルの仲間に似ていますが、これは小さくて食用にはなりません。それで、捨てられてしまうという意味から、ステゴビルという気の毒な名前がつけられています。
学名はCaloscordum inutileです。inutileは役に立たないという意味です。学名でもこんな名前になっています。
メモ
ユリ科の多年草です。宮城、茨城、東京、愛知、京都、広島などの限られた地域に分布します。人里に近い原野の道端などにまれに生息します。
高さが15センチから20センチ程度。花期は9月から10月です。白色または、淡紫色の六弁花をつけます。一個体の葉の数は1~6枚です。3枚以上の個体だけに花茎ができます。
語句
蒜……ヒル – ネギ・ノビル・ニンニクなど、においが強く食用になる草の総称。
多年草……たねんそう – 草本植物で、冬期に地上部の全部または一部は枯れるが、地下部は越冬して毎年春に芽を出すもの。キク・オオバコ・ススキ・ユリなどの類。宿根草。多年生草本。◇シュンラン・オモト・ユキノシタなどの常緑多年草は、地上の葉も枯れないで越冬する。
花茎……かけい – 葉をつけないで、先端に花だけをつける茎。根や地下茎から直接のびる。◇タンポポ・チューリップ・スイセンなどに見られる。
スブタ
スブタ。多くの人が真っ先に連想するのが中華料理の酢豚だと思います。しかし、これは植物のスブタで、中華料理とは全く関係ありません。
植物のスブタはトチカガミ科の一年生水草です。その葉は根ぎわから群生し、幅が5ミリから7ミリで、長さが10センチから20センチになります。
女性の乱れた髪のことを、名古屋地方では「すぶた髪」といいます。
スブタの細長い葉が群生しているさまが、女性の乱れた髪を連想させることからこの名がつきました。
メモ
トチカガミ科の一年生水草です。本州、四国、九州、沖縄に分布します。水田などの浅い水中に生えます。
花期は8月から10月。花茎を水面に伸ばし、三枚の細長い花弁からなる白い花をつけます。種子は楕円形で長さが1.5ミリ程度。その表面に尖った突起が散在しています。
カクレミノ
昔話に登場する天狗や鬼は、三つの宝を持っていることになっています。打てば何でも欲しいものがでてくるという「打ち出の小槌」、それをかぶれば身を隠すことができるという「隠れ笠」、同じくそれを身につければ、姿を隠すことができるという「隠れ蓑」の三つです。
カクレミノという名をもつ木があります。この木の若い枝は三裂、または五裂しています。その葉の形が、天狗や鬼が持っている「隠れ蓑」に似ているということから、この木はカクレミノと命名されました。
メモ
ウコギ科の常緑小高木です。関東南部以南、四国、九州、沖縄に分布します。高さが5メートルから10メートルあります。
庭木に用いられ、神聖な木とされ、神事にも使われます。九州にはその葉を噛むと、歯が欠けるという言い伝えがあります。従って、この木はハコボレ、ハボロなととも呼ばれています。
バクチノキ
花札やサイコロなどで、お金や品物を賭けて勝負することを博打(バクチ)といいます。樹木のなかにバクチノキという名前をもっているものがあります。
バクチノキはバラ科の常緑樹です。その褐色の樹皮は鱗片状になってはがれ落ちます。はがれ落ちると紅黄色の肌が表れます。それがバクチに負けて身ぐるみはがされてしまうのを連想させることから、バクチノキという名前になりました。この木はハダカノキ、バカノキなどの別名もあります。何とも情けない名前ですね。
メモ
バラ科の常緑樹です。関東以西、四国、九州、沖縄に分布します。暖地の照葉樹林中に生え、高さは15メートルほどになります。葉は楕円形で、長さが10センチから20センチ程度。9月から10月に五弁の小さな白い花をつけます。バクチノキはマホガニーの代用品として家具や器具などに使われます。
語句
常緑樹……じょうりょくじゅ – 四季にわたって緑色を帯びた葉をつけている樹木。カシ・シイ・ツバキなどの常緑広葉樹とマツ・スギ・モミなどの常緑針葉樹がある。常磐木ときわぎ。⇔落葉樹。
照葉樹林……しょうようじゅりん – 照葉樹からなる常緑広葉樹林の一つ。照葉樹は常緑広葉樹の一部で、葉は深緑色、革質・無毛で、照り返すような光沢がある。西南日本、アジアの東南部、北アメリカのフロリダ半島、南アメリカの中部など暖温帯から亜熱帯に見られる。常緑広葉樹林。
照葉樹……しょうようじゅ – 照葉樹林の指標となる樹木。常緑広葉樹。
マホガニー……センダン科の常緑高木。熱帯植物で、北アメリカ南東部・西インド諸島の原産。高さは30メートルに達し、葉は羽状複葉。花は緑黄色、果(さくか)を結ぶ。材は赤黒色で木目が美しく、堅牢で水に強く、器具材とする。広くは、同様の木目をもつ別科のものを含めることがある。桃花心木。
ドロノキ
ドロノキはポプラの仲間の落葉樹です。ドロノキとは「泥の木」という意味です。どうしてそんな名前がついたのでしょう。
この木は材質が軟らかいため、材木としては役に立ちません。ですので、泥のような存在である、ということから、この名がついたという説があります。他に、この木がドロノキと呼ばれているのは、河岸の泥の州(す)の上などに生えているからとか、樹皮が泥の色をしているから、という説もあります。
泥が役に立たないなんて、陶芸家には失礼なことだと思いますが。
メモ
ヤナギ科の落葉高木です。北海道、本州中部以北に分布します。山地帯上部から亜高山帯下部の河川沿いに生えます。20メートルから30メートルの高さになります。葉は楕円形で、長さが6センチから9センチ程度。花期は4月から5月。デロ、ロゴヤナギ、クロドロ、カワドロ、ドロンボなどの別名もあります。
語句
落葉樹……らくようじゅ – 秋の低温期になるとすべての葉を落とし、翌春に新しい葉を生じる樹木の総称。多くは広葉樹。ブナ・ミズナラ・イチョウ・ケヤキ・カラマツ・セコイアなど。⇔常緑樹
亜高山帯……植物の垂直分布帯の一つ。山地帯と高山帯の間に位置する。標高は場所により異なるが、本州中部ではほぼ1600~2400メートルの範囲。シラビソ・コメツガなどの常緑針葉樹が発達する
ナナメノキ
ナナメノキという名からは、まっすぐな木ではなくて、斜めになっている木といったイメージを連想します。
しかし、ナナメノキはそんな生え方をしているわけではありません。
名前の由来については諸説ありますが、もっとも有力な説がこうです。
この木は昔ナノミと呼ばれていました。
それは「名の実」(人によく知られている実)という意味です。この木の実が美しいということに定評があることからナノミと呼ばれ、それが実る木なのでナノミノキとなり、転じて、ナナメノキと呼ばれてるようになった、ということです。
メモ
モチノキ科の常緑高木です。静岡県以西の本州、四国、九州に分布します。山地に生え、庭木や公園樹として植えられています。
高さは10メートル以上になります。5月から6月に薄紫色の花をつけます。果実は長さ1センチほどの楕円形で赤く熟します。ナナミノキとも呼ばれています。
語句
常緑……草木の葉が一年中枯れることなく緑色をしていること。
高木……樹木の便宜的な分類で、木質の堅い幹を持ち、直立して三メートル以上に生長する木。マツ・スギ・ケヤキなどの類。
コシアブラ
コシアブラは樹脂をとり、それを漉して(こして)塗料として用いていました。
植物学者の牧野富太郎は、コシアブラは「漉し油」の意味で、その名はそこからきていると見ています。
コシアブラには、ウサギカジリ(菟かじり)、トウフノキ(豆腐の木)といった別名もあります。
野ウサギがこの木を好物にしていて、冬場にその樹皮や芽をかじります。
トウフノキと呼ばれているのは、材質が柔らかく、色が白いので、豆腐を連想させるからです。
メモ
ウコギ科の落葉高木です。北海道、本州、四国、九州に分布します。山地に生え、16メートルくらいの高さになります。
葉は五枚の小葉からなっていて、長い枝葉をもちます。花期は8月から9月にかけて。果期は10月から11月。その若芽は食用にされ、またその材は下駄や箸、楊枝などに加工されます。
語句
落葉……散り落ちた葉。特に、晩秋から冬にかけて散る落葉樹の葉。
高木……樹木の便宜的な分類で、木質の堅い幹を持ち、直立して三メートル以上に生長する木。マツ・スギ・ケヤキなどの類。
ボロボロノキ
さんざっぱら使用してダメになっていることを「ボロボロ」といいます。それがこの植物の名前になっているのです。
この木がボロボロノキと命名されているのは、枝がもろくて折れやすいからです。
太い枝以外は、秋から冬にかけて、葉とともに折れてしまい、落ちてしまいます。
とにかく、この木はボロボロと折れやすいのです。
この木の特徴の一つになっています。
それにしてもひどい名前をつけますね。
メモ
ボロボロノキ科の落葉小高木です。九州中部以南、沖縄に分布します。常用樹林内に生えます。
高さは4メートルから6メートルで、大きなものは10メートルほどになります。春に芳香のある小さな花を咲かせます。その果実は楕円形で8ミリほどの長さがあり、カメムシがそれを子育てに用いています。
ヘビノボラズ
妙ちくりんな名前をつけたものです。
ヘビノボラズは枝に鋭いトゲを持っています。このトゲはのぼろうとする蛇を邪魔し、蛇はのぼることができません。
そんな想像から、この木はヘビノボラズ(蛇のぼらず)という名前がつきました。ちなみに、トリトマラズ(鳥止まらず)という別名もありますが、もちろんそれも、枝のトゲのせいです。
ヘビノボラズの仲間のメギはコトリトマラズ(小鳥止まらず)という別名をもっていますが、その名も枝にトゲがあることによります。
メモ
メギ科の落葉低木です。東海地方から近畿地方、宮城県に分布します。山地に生え、高さは50センチから70センチ程度です。
枝に三岐したトゲがあります。葉は長倒卵形で、ふちにトゲ状の鋸歯(きょし)があり、秋になると紅葉します。
初夏に黄色の花が咲きます。果実は球形で、赤く熟します。
オニシバリ
ガンピやミツマタなどのジンチョウゲ科の樹木は樹皮が丈夫で、和紙の原料として用いられています。オニシバリもジンチョウゲ科の落葉低木で、この木も樹皮が非常に丈夫で、和紙の原料になっています。
オニシバリは樹皮を構成している繊維が強いため、枝を折っても樹皮は容易には折れません。それだけ強ければ、怪力を持つ鬼さえも拘束することができるということから、この木はオニシバリ(鬼縛り)というユニークな名前になったのです。
メモ
ジンチョウゲ科の落葉低木です。東北南部の本州、四国、九州に分布します。山地の林内に自生します。高さは1メートルほどです。早春に黄緑色の花をつけます。夏に熟す赤い果実は辛い味で、毒を有しています。夏に落葉することから、ナツボウズ(夏坊主)といった別名もあります。
バリバリノキ
堅い煎餅(せんべい)はバリバリと音を立てて食べます。また、バリバリ働くというバリバリは元気で勢いがよいことを意味します。
ではこのバリバリノキのバリバリとはなんでしょう。
この木の葉は硬質で、ふれ合うと音を立てます。植物学者の牧野富太郎はバリバリノキのバリバリはその音に基づいたものだろうといっています。
もう一つ、
この木は葉や枝に精油を含んでいます。このため、枝葉を燃やすと、バリバリと音を立てて、勢いよく燃えるのです。バリバリノキという和名はそこからきているという説もあります。
メモ
クスノキ科の常用高木です。関東南部以西の本州、四国、九州、南西諸島に分布します。高さは10メートルほどになります。
葉の長さが20センチ、葉の幅は2センチほどで、枝の上部に集まってつきます。花期は8月で、葉の付け根から短い花枝をだし、小さな淡黄色の花をつけます。
キソウテンガイ
アフリカ南西部の砂漠にウェルウィッチアと呼ばれている珍妙な植物が生えています。
たいへん変わっていることから、キソウテンガイという和名をつけました。
この植物は一生のあいだに葉を四枚(子葉二枚、本葉二枚)しかださずに、本葉は永遠に生長を続け、帯状に伸びていきます。自生地で観察された葉の長さは、最高で8.8メートルにもなります。
自然の状態では二枚の葉は縦に裂けて絡まりあっていて、キソウテンガイという名にふさわしい様相を呈しています。
メモ
ウェルウィッチア科に属します。アフリカ南西部のアンゴラからナイビアにかけて、砂漠地帯に自生します。
ウェルウィッチアという名はこの植物を発見したオーストラリアの探検家ウェルウィッチの名にちなみます。裸子植物でありながら、被子植物の特徴も兼ね備えています。
語句
子葉……種子から発芽した幼植物に最初に出る葉。種子の中で既にできていて、一般に普通葉と形が異なる。単子葉類には1枚、双子葉類には通常2枚ある。
本葉……種子植物の芽生えで、子葉よりあとに出る葉。普通葉。
裸子植物……らししょくぶつ – 種子植物を二大別した一つ。胚珠(はいしゅ)が裸出し、受粉の際、花粉はただちに胚珠に付着する。イチョウとソテツでは精子を有し、シダ植物と被子植物とをつなぐものと考えられる。マツ・スギ・イチイ・カヤなど。⇔被子植物。
被子植物……ひししょくぶつ – 種子植物を二大別した一つ。もっとも進化した群とされ、受精後種子を入れた果実となる雌しべ(子房)をもつ。白亜紀以後に甚だしく分化して現在の高等植物の大半を占める。子房は心皮から成り、内部に胚珠を包んで保護する。双子葉植物・単子葉植物の2群に大別。⇔裸子植物。
ナンジャモンジャ
ナンジャタウンとは何の関係もありません。
ナンジャモンジャは一種類ではありません。正体の分からない木をナンジャモンジャと呼びました。ですので、クスノキ、バクチノキ、ヒトツバタゴなど、いろいろな木がその名で呼ばれています。
植物学者の牧野富太郎によれば、千葉県香取郡の神崎神社にあるのが、本物のナンジャモンジャで、その名は徳川御三家、天下の副将軍、水戸光圀が名付けたという話が伝わっています。その正体はクスノキなのですが、今日ではナンジャモンジャはもっぱらモクセイ科のヒトツバタゴの別名となっています。
メモ
ヒトツバタゴ=モクセイ科の落葉高木です。本州中部の木曽川流域と長崎県の対馬に分布します。高さが30メートル、直径が70センチもあります。瑞浪市、恵那市、中津川市自生地と、対馬では天然記念物に指定されています。5月に白い花が咲きます。ロクドウボク(六道木)という別名もあります。上記のイラストはヒトツバタゴです。
語句
千葉県香取郡の神崎神社
ミソナオシ
ミソナオシ(味噌直し)という珍しい名の植物があります。
それはマメ科の小低木で、味噌が悪くなり、味が落ちたとき、この木の葉や茎をその中に入れると、味がよくなるといいます。ミソナオシという名はそこからきているのです。
味噌の味を直してくるなんて、なかなか重宝ですね。
ミソナオシは別名、ウジクサ(蛆草)ともいいます。味噌に蛆(うじ)がわいたときに、この植物を入れると、蛆が死ぬといいます。そこからウジクサという名がつきました。
メモ
マメ科の小低木です。本州中部以西、四国、九州、沖縄に分布します。底山地の林緑や道端などに生えます。
若い枝は緑色をしており、いっけん草のように見えます。
花期は8月から9月。枝の頂部から花軸をだし、穂状の総状花序をつけ、黄白色の蝶形の花を咲かせます。
語句
小低木……概ね1m以下のものを小低木(しょうていぼく)と分類する場合がある。
林縁……りんえん – 森林の、草地や裸地に接する部分。微気候条件の変化があり、林内と異なる多様な動植物がみられる。
花軸……かじく – 花をつける枝・茎。
穂状……すいじょう – 植物の穂のような形。
総状花序……そうじょうかじょ – 無限花序の一。比較的節間の伸びた主軸に柄のある花を多数つけた花序。フジなど。
花序……花軸についている花の配列状態。花軸の下位から上位へと順次開花する無限花序と、主軸の頂端から下位へと開花していく有限花序に大別される。
ショウベンノキ
人が生存するには水が必要不可欠です。人は水を飲み、汗や尿として排泄しています。
植物も水がないと生きられません。根から水を吸収し、葉から水蒸気として排出しています。それを植物の汗や小便として見なすことができます。
小便といえば、ショウベンノキといった妙ちきりんな名をつけられた木があります。
春先に、この木の枝を切ってみると、樹液があふれでてきます。それをこの木の小便とみなしたことから、この木はショウベンノキと名付けられたのです。
他にいいようがなかったのでしょうか。
メモ
ミツバウツギ科の常緑低木です。四国、九州、沖縄に分布します。暖帯や亜熱帯地域の常緑樹林に生え、3メートルから4メートルの高さになります。
葉はふつうは三出複葉で、対生します。花期は5月から6月。直径5ミリほどの小さな花をたくさん咲かせます。果実は肉質で赤く熟します。
語句
常緑……じょうりょく – 草木の葉が一年中枯れることなく緑色をしていること。
低木……ていぼく – 通常、ヒトの身長以下の高さの樹木をいう。主幹と枝との区別がはっきりせず、根もとから多くの枝に分かれているものが多い。ナンテン・アジサイなど。
暖帯……だんたい – 温帯のうち、亜熱帯に近い地帯。暖温帯。
複葉……ふくよう – 小葉に分かれた葉。ほとんどは二つ以上の小葉からなる。羽状・掌状の別がある。ナンテン・エンドウ・アケビなど。
リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ
植物の中でいちばん短い名前はイ(藺)です。イグサ(藺草)ともいいます。これはたったの一字です。
対照的にもっとも長い名前をもつ植物は、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシです。21文字にもなります。覚えられませんね。
そもそも、カタカナって読みにくいですね。句読点を入れて読みましょう。
リュウグウノ、オトヒメノ、モトユイノ、キリハズシ
これで読みやすくなりました。
アマモ(甘藻)という海草があります。リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシはアマモの別名なのです。
これは「龍宮の乙姫の元結の切り外し」という意味です。元結いとは髪の髻(もとどり – 髪を頭上に束ねたもの)を結び束ねるひものことです。
海岸に打ち上げられたアマモの細長い葉を見て、龍宮の乙姫の髪を結ぶ紐の切り外しを連想したのだろうといわれています。
昔の人はロマンチックなのです。
メモ
ヒルムシロ科の多年生海草です。北海道、本州、九州に分布します。アマモという名は根茎に甘みがあることから、付けられています。
内湾の水深1メートルから5メートルの砂や砂泥の海底に群生します。その場所をアマモ場とかアジモ場といいます。葉は細く扁平で、長さが50センチから100センチあり、幅が3ミリから7ミリ程度です。
語句
藺……イグサ科の多年草。湿地に自生。また水田に栽培。地下茎をもつ。茎は地上約1メートル、中に白色の髄がある。葉は退化し、茎の基部で褐色の鞘となる。5~6月頃、茎の先端に花穂をつけ、その上部に茎のように伸びるのは苞。花は小さく緑褐色。茎は畳表・花筵(はなむしろ)、髄は灯心(とうしん)とする。イグサ。トウシンソウ。
多年生……多年生植物のこと。
多年生植物……2年以上にわたって生育する植物の総称で、一年生植物、二年生植物以外のすべての高等植物を含む。多年生植物はさらに、有性生殖を何回行うかによって、一回結実性と多回結実性とに分けられる。一回結実性にはセリ科の多年草、タケなどがあり一生に1回だけ花を咲かせて枯死するが、多年生植物の多くは多回結実性である。デンマークの植物生態学者ラウンケルは、生育不適期に形成される休眠芽の位置によって、多年生植物をいくつかの生活型に分けている。たとえば、地上植物の高木、低木などは休眠芽を地上30センチメートル以上につける。地表植物は休眠芽を地表と30センチメートルの間につける。半地中植物は休眠芽を地表面に接してつける。地中植物は地上部はすべて枯死してしまって休眠芽を地中につける、などである。このように多年生植物は、地上部、地下部などの形態や寿命はさまざまで、落葉樹のように葉だけ落とすもの、地上部の植物体全体が1年で枯死して地下部だけ残すものなどがある。
根茎……こんけい – 地下茎の一種。地下を這う根状の茎。多くは節をもち、各節から不定根を生じる。タケ・ハス・シダ類の地下茎など。