毎月住居費を支払うなら最後は自分の資産になる持ち家のほうがいい、という人は多いのです。逆に転居や家族構成の変化に応じて、住まいを変えられる賃貸の自由さがいい、という人もいます。
持ち家派は住まいと財産形成を兼ね、賃貸派は住まいと財産形成を別々に考えます。つまりは価値観の違いであって正解はありません。
ただ、同じ物件に同じ期間、分譲、賃貸に住んで、最終的に財産が残っている方が勝ちとするならば、30年後も物件価値、賃貸が同じであるならば、ほとんどのケースで持ち家に軍配が上がります。
持ち家派が圧倒的に不利になるのは、ローンの返済中に何らかの事情で転居しなければならなくなったとき、物件の価格が大幅に値下がりして、売るに売れない、貸すに貸せない窮地に陥ってしまう場合です。
今後の不動産状況を考えたとき、こうした事態になるのは決してレアケースとはいえません。
国立社会保険・人口問題研究所は、日本の総世帯数が2019年の5,300万世帯をピークに35年には4,955万世帯まで減少すると推計しています。世帯数が減れば、需要減から不動産価格も必然的に下落します。また、40年には東京の住宅価格が10年よりも約6割も減るという予測もあります。
無理して郊外に買うのはハイリスク
仮にこの予想が現実になったとしても、全ての物件が押し並べて6割減になるわけではありません。
国交省では首都圏沿線別に人口の動態予想をしています。それによると、田園都市線、京王線、東横線、埼玉高速線沿線は35年まで人口増が見込めて、高齢化の影響が小さいとされます。
また、人口が減って高齢者の比率が増えると、産業施設や医療福祉施設はある程度固まっていた方が暮らしやすいです。国も「立地適正化計画」でコンパクトなまちづくりを推進していて、多くの自治体が重点的に公共サービスを提供するエリアと、そうではないエリアを区別する方針です。
たとえば、主要駅に近い高層マンションなどは利便性が高いうえに、将来においても公共サービスは手厚く、物件価格が維持されやすいのです。人口減の著しい沿線や郊外の物件は、資産価値の目減りが大きいと予想されます。
前者のような物件であれば持ち家が有利、後者のような物件なら無理して買わずに賃貸にしておくのが賢明、という判断ができるかもしれません。
もちろんそのまま住み続けるのであれば、物件の評価額がどんなに下がろうとも関係あません。
ただし、これまでの議論と別に「圧倒的に賃貸派ででいたほうがいい」ケースがあります。親が評価額の高い場所に持ち家を所有していて、将来それを相続することになる人です。特に一人っ子の場合です。
というのも、被相続人が相続開始時前の3年間、持ち家に住んだことがなければ、相続税の「小規模宅地等の特例」(家なき子特例)により、評価額の8割引の相続税で受け継ぐことができます。
これはつまり、物件を8割引で購入できる権利と同じですから、受けないのは損です。相続後に売却してもかまいません。
該当する人は賃貸でいることをおすすめします。