土砂災害のメカニズム 発生要因
土石流とは土砂と水が混じり、泥水のようになり、巨大な石が前面に密集し、流れ下る速度が速いため、破壊力は凄まじいものとなります。
土石流の発生は、いろいろな要因があります。
斜面崩落が一番多く、それが引き金となり、崩れた土砂が、勢いよく傾斜や谷を下り、土石流となります。
また、河川に堆積した土砂が、大雨により一気に動かされ、土石流となる場合があります。
川をせき止めた堆積物が、決壊して、土石流となることもあります。
渓床勾配(けいしょうこうばい)の角度に影響されて、発生した土石流は流れていきます。
渓床勾配とは、川底の傾きのことです。
およそ20度以上の沢沿いや山腹の、渓床勾配(けいしょうこうばい)で、土石流は発生します。
3~10度くらいの渓床勾配(けいしょうこうばい)で、土砂が堆積(たいせき)します。
堆積区間や流下区間で、土石流の被害が大きくなります。
河川合流点付近や、山麓部の渓流の出口付近で、最も土石流の被害が大きくなります。
降雨量や流域面積、川の堆積物の有無、渓床(けいしょう)の勾配などが、土石流の発生要因としてあげられます。
この中で渓床勾配(けいしょうこうばい)が大変重要になるのです。
土石流における土砂災害警戒区域とは
土砂災害防止法は、土砂災害の恐れのある、土砂災害警戒区域を明らかにし、開発行為の制限や、警戒避難態勢の整備などの対策を、推進しようとするものです。
これは、2000年に制定され、2001年に施行されました。
この土砂災害防止法による、土砂災害警戒区域とは、渓流で土石流の発生の恐れがある場合におき、渓流出口の扇頂部から下流で、勾配が2度以上の区域をいいます。
土石流が幾層も堆積する、渓流の出口では、高まりができて、扇状の地形ができます。
この地形を扇状地と言います。
土石流が、堆積しやすい扇状地の渓流の出口は、極めて危険性が高いのです。
土砂が溜まっているところや、川の勾配が高いところで、土石流が発生しやすく、同じ渓流で何度も発生します。
土石流が発生する危険性がある、土石流危険渓流は、人家5戸以上か、保全人家5未満であっても、学校や官公署がある場所に流れ込み、被害を及ぼす恐れがある渓流が、土石流危険渓流に属します。
阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)のよる崖崩れで、六甲山麓の渓流に、に大量の土砂が堆積しいて、土石流が起こりやすくなっています。
広島土砂災害地は、土石流の土砂災害警戒区域を、指定する地域だったのです。
一般的に土石流は、雨の降り始めから、100ミリを超えて、1時間に20ミリ以上の、強い雨が降ると、起こしやすくなります。
前兆として、水だけではなく、土石の流れや、倒木が大量に流れたり、増水していたところが、急激に減少したり、川の水が赤くなったりしたときは、土石流が発生する可能性が、とても高いので注意が必要です。
土石災害警戒区域とは? 斜面崩壊による災害
高さ5メートル以上、斜面の傾斜が30度以上、崖の下に5戸以上の家屋がある場合、土石災害防止法での、土石災害警戒区域(急な傾斜地での崩壊)が指定されます。
さらに、急傾斜地の下の端から、急傾斜地高さの2倍(50メートルを超える場合は50メートル以内)及び、水平距離が10メートル以内の区域が指定されます。
一般的に、傾斜面の高さの2倍くらいまで、崩れた土砂が到達します。
対策工事が実施されているところでは、急傾斜地の崩壊地域でも、急傾斜地崩壊危険区域となります。対策工事実施箇所の急傾斜地法です。
これらは、土砂災害の法指定区域です。
ほかに、危険予想箇所として山地災害があります。
斜面崩壊の要因である、マサ土(まさど)
マサ土とは、花崗岩類が風化してもろくなった、砂状のものです。(詳しくは下記参照)
マサ土(まさど)とは、花崗岩などの風化が進んで砂状・土状になったもの。真砂(まさご)とも言う。園芸用に用いられる時は「真砂土」と表記し「まさつち」と読まれることが多い。日本では主に関西以西に広く分布しており、安価なため園芸・敷土などに広く用いられている。土質力学的には、分布地域により鉱物の組合せや粒径が違い性質が異なること、花崗岩の風化が深層に至り表面は完全に土砂化することなどから、安全性の確定が特に難しい。水に弱い土質であり、流水によって容易に侵食される。集中豪雨が長時間続くと、表土層底部に浸透水が貯まりバランスが崩れて大規模な崩壊に至ることもある。2014年8月19日~20日に広島市で発生し大きな被害をもたらした土砂災害の一因として、現場周辺のマサ土による地質特性が挙げられている。【ウィキペディアから引用】
黒雲母など、花崗岩中の鉱物は、容易に雨水に反応して、粘土鉱物に変化します。
それにより、鉱物間の結びつきが弱い、砂状のマサ土になります。
六甲山地は、厚いマサ土が、数十メートルにもなるのです。
粗いマサ土は、水を通しやすく、そのまま地下に浸透させます。
しかし、水量が限界を超えると、排水ができなくなります。
やがてあふれ、表面部分は簡単に崩れてしまいます。
これを、表面崩壊と言います。
川底や斜面になどに、崩れた土砂が厚く溜まっていて、大雨により、一気に流れ出します。
断層の多い六甲山では、割れ目の深部まで雨水が浸透し、風化して、分厚いマサ土に覆われているのです。
斜面崩壊(崖崩れ)や地すべりの前兆現象は?
一般に斜面崩壊(崖崩れ)は、大雨により、地下に雨水が浸透して、岩石や土砂の強度が低下して、発生します。
このときに、限られた場所で、急激に岩石や土砂が崩れるのが、斜面崩壊です。
この斜面崩壊がゆっくり移動するのが、地すべりです。
斜面崩壊や地すべりは、前兆現象が伴います。
頭部亀裂という、斜面の山側に、段差や亀裂が見られた場合、この兆候です。
このあと、段差や亀裂が大きくなると、崖崩れが起こります。
滑りが進行しますと、擁壁や斜面が前にせりだすため、斜面が膨らみます。
雨水が開いた亀裂に浸透し、斜面で地盤が前方へ押し出されています。
膨らみだした下の方では、湧水(ゆうすい)が、見られることがあります。
膨らみが進行すると、湧水や地下水が濁りだします。
山地がゆるんで、流れた土砂が混ざってるからです。
こうなったら、崩壊が近いです。
湧水が急に多くなる場合も、注意が必要です。
パラパラと、小石が落ちてきた場合は、大変危険な状態と言えます。
これは、地盤が前方へ押し出されているせいです。
斜面崩壊の観測と対策は?
- 第一警戒体制は、雨量と斜面崩壊の関係では、雨が前日まで降っていない場合、当日の雨量が100ミリを超えたとき。
- 第二警戒体制は、さらに雨量が30ミリとなる豪雨が始まったとき。
避難は、これらの雨量を参考にします。
抑止工という、斜面崩壊の対策工があります。
アンカー工といい、地盤に、長い鋼鉄の棒を、安定地盤まで打ち込むのが、代表的な抑止工です。
これで、土砂が崩れ落ちるのを防ぎます。
また、崩壊規模が小さければ、よく用いられるのが、擁壁公です。