土石災害の危険度予測 マサ土が厚いところで斜面崩壊が多発?
マサ土(まさど)とは、花崗岩などの風化が進んで砂状・土状になったもの。真砂(まさご)とも言う。園芸用に用いられる時は「真砂土」と表記し「まさつち」と読まれることが多い。日本では主に関西以西に広く分布しており、安価なため園芸・敷土などに広く用いられている。土質力学的には、分布地域により鉱物の組合せや粒径が違い性質が異なること、花崗岩の風化が深層に至り表面は完全に土砂化することなどから、安全性の確定が特に難しい。水に弱い土質であり、流水によって容易に侵食される。集中豪雨が長時間続くと、表土層底部に浸透水が貯まりバランスが崩れて大規模な崩壊に至ることもある。2014年8月19日~20日に広島市で発生し大きな被害をもたらした土砂災害の一因として、現場周辺のマサ土による地質特性が挙げられている。【ウィキペディアから引用】
斜面崩壊の分布を、神戸市の六甲山地で確認しますと、多発しているところは、摩耶山から西部です。
摩耶山から西部の六甲山地が、花崗岩の風化があるからです。
厚さ10~20メートルと、マサ土が厚くなっているのに、対応しています。
大量に雨水が浸透すると、マサ土は、排水ができなくなります。
これにより、一気に崩れる可能性があり、斜面崩壊が発生しやすくなるのです。
斜面の地下水位を上昇させる、大量の雨水は、崖の途中から、泥と水の混合されたものが出ると、パイプ状の穴をつくり、一気に崩れるパイピング現象が発生します。
パイピング現象とは。浸透水の挙動により生じる地盤や構造物の破壊現象。【ウィキペディアから引用】
急傾斜地で斜面崩壊が多発
斜面崩壊に大きな影響を与えるのが、斜面の勾配です。
崩れやすくなるのは、斜面の傾斜が30度以上。
40~49度が、最も崩れやすい傾斜です。
隆起量の多い六甲山地頭部で、このような斜面が多く見られます。
阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)では、この辺りで、甚大な被害がありました。
雨水が集まりやすいのは、凸型の斜面より、凹型の斜面です。
凹型の斜面のほうが、斜面崩壊が発生しやすいのです。
地震動では、凸型の斜面のほうが、崩壊しやすいので、どちらも、よろしくありません。
断層付近で斜面崩壊が多発
破砕帯が発達しやすい断層付近では、岩石は粉々に砕ける細粒(細かいつぶ)となり、粘土化しているので、崩壊しやすくなります。
破砕帯とは、断層運動により,地層あるいは岩石が粉々に砕かれた部分が一定の幅をもち,一定の方向に延びている場合,その部分をいう。幅数cmの場合から数百mの場合まである。大規模な断層には大規模な破砕帯を伴う場合が多く,このため,何々断層といわず何々破砕帯ということもある(たとえば,棚倉破砕帯やメンドシノ破砕帯など)。破砕帯の岩石は強度が低いため,地すべりの原因となることがある(これを破砕帯地すべりと呼ぶ)。【コトバンクから引用】
互助橋断層や諏訪山断層など、六甲山地の山麓部に走る断層付近では、断層崖があり、崩れやすいのです。
見晴らしがとてもよいので、住宅が多く建ち並んでいます。
阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)では、まさに、この断層付近で、750箇所もの斜面崩壊が多発ししました。
互助橋断層付近で、特に、斜面崩壊が多く発生しました。
地震で斜面に亀裂ができたため、その後の降雨により、雨水が浸透して、1500箇所以上の斜面崩壊と、拡大したのです。
土砂災害警戒区域での崩壊(急傾斜地での崩壊)
損傷が、約830箇所以上の、神戸市内の土砂災害警戒区域で、勾配や亀裂、崖の高さ、集水範囲、斜面上の湧水などの調査を行ったそうです。
その結果、39箇所が、今後の降雨などにより、著しく崩壊する可能性のあることが分かりました。
それらの多くは、断層が走る山麓部に分布しています。
土石流災害の危険地域
土石流対策の砂防堰堤(さぼうえんてい)が満杯です。
砂防堰堤(さぼうえんてい)とは、小さな渓流などに設置される土砂災害防止のための設備のひとつ。砂防法に基づき整備され、いわゆる一般のダムとは異なり、土砂災害の防止に特化したものを指す。法的定義では「基礎地盤から堤頂までの高さが15メートル以上のものをダムと呼び未満のもを堰として扱われてる。」【ウィキペディアから引用】
これまで、六甲山地では、土石流被害の軽減のため、およそ450以上の砂防堰堤がつくられてきました。
しかし、1967年の豪雨により、互助橋堤防が、土石流で埋まってしまいました。
このように、多くが満杯状態になってしまい、機能を充分に果たしていません。
流域に溜まっている堆砂量(たいさりょう)や、河川流域の砂防堰堤(さぼうえんてい)で、せき止められる土砂量を、現場で調べ上げ、それぞれの河川が、砂防堰堤(さぼうえんてい)で、食い止められるかの判定を、数値化する必要があります。
堆砂とは、上流から流れ込み、貯水池の底に溜まった土砂。【コトバンクから引用】
石屋川(いしやがわ)で、砂防堰堤(さぼうえんてい)で、止められる土砂量は、MAXでおよそ1万2000立方メートルです。
これは、堆積する土砂量の半分以下であり、土石流はせき止められません。
そこで、兵庫県は、ワイヤーセンサーを設置し、土石流が発生すると、センサーが感知し、警告するようにしているのです。
全国の河川でも、このような調査を行う必要があるのですが、実際は行われていません。
小規模河川で、土石流の危険性が高い
1987年、建設省河川局砂防部が、どの程度土石流の危険性があるのか、それぞれの河川で、数値化して、判定する調査法を示しました。
河川勾配が、まずは、危険要素としてあげられます。
15度以上の勾配は、危険なランクになります。
河川流域の堆積物の厚さが、次にあげられます。
2メートル以上の厚さであれば、危険なランクとなります。
他に、危険要素である、斜面上の湧水の存在や、斜面崩壊の分布などを入れて、危険度を数値化します。
この方法で、六甲山地を調査したところ、多くの小規模な渓流(0.1キロメートル以下)が、危険ランクにあることが分かったそうです。
例えば、急な河川勾配の、神戸市禅昌寺地区(ぜんしょうじ)の妙法寺川支流は、河川堆積物が厚い、危険ランクに属することが分かりました。
水の流れも少ない小さな渓流では、ほとんどの住民が、ここに土石流が流れてくるとは思っていません。
広島土砂災害でも、八木地区など、小規模な渓流(0.1キロメートル以下)で、土石流に襲われ、甚大な被害をもたらしました。