洪水被害を起こした佐用川(さよ)の特徴と雨量、河川の水位
佐用川は、底の浅い、お皿のような形をしています。
そのため、短い時間で大量の雨が降った場合、流量を流下できず、もともと氾濫しやすい河川なのです。
佐用では、台風9号(2009年8月9日)での豪雨で、1時間雨量82ミリ、3時間雨量179ミリ、24時間雨量327ミリでした。
佐用町付近では、短時間で集中的に、大量の雨が降りました。
佐用川の河川水位は、8月9日午後4時で2メートル、午後10時には5メートルにも達しています。
時間差が1~2時間以内と、雨量と水位上昇が、短時間であったことが特徴です。
洪水被害の佐用川の豪雨被害の概要
佐用町では、家屋被害は、全壊が136棟、大規模半壊が259棟ありました。
朝来市(あさごし)では、全壊9棟、大規模半壊10棟、宍栗市(しそうし)では、全壊16棟、大規模半壊26棟ありました。
兵庫県全体で半壊は637棟と、きわめて被害が大きかったのです。
人的被害は、佐用町で死者・行方不明者20人、豊岡市と朝来市で各1人の死者を出し、全国では25人もの死者を出しました。
洪水被害 護岸崩壊の要因とは?
護岸とは、河岸,海岸の,水ぎわの浸食防止のために造られる工作物。法覆工 (のりふくこう) ,法止工,根固め工の3部分から構成される。【コトバンクから引用】
佐用川の、護岸の崩壊箇所は、共通点が多くあります。
典型的なのは、久崎地区(くざき)の護岸崩壊です。
久崎地区の佐用川には、上流に川幅の狭い狭窄部があり、狭窄部(きょうさくぶ – すぼまって狭い部分)には橋があり、下流に蛇行する屈曲部、千種川との合流点があります。
直角に交わる、千種川と佐用川の合流点では、佐用川より千種川のほうが、河床(かしょう – 川底の地盤)が高いのです。
よって、佐用川では、千種川からの水の流入増大の、せき上げ効果により、水位の上昇が発生しました。
さらに、二つの河川の水流がぶつかるため、衝撃波が発生し、水位が上昇したと考えられています。
また豪雨時に、大量の流木が、狭窄部にかかる橋の欄干に、引っかかっていたため、さらに、水位が急上昇したと考えられています。
豪雨後、大量の流木が、欄干に残っていました。
護岸崩壊の原因は、合流点上流の、狭窄部にかかる橋付近で、水位が急激に上昇し、水は橋を乗り越え、曲がり始めにあたる橋の、80メートル下流の護岸を、越水(えっすい)しました。
越水(えっすい)とは、堤防などの頂上から流出する水。越流水。【コトバンクから引用】
住宅側(護岸内部)の土が、越水時には、濁流により、簡単に浸食され、護岸が自立できなくなり、崩壊したと考えられています。
護岸内側は、内側の土が大きく削り取られ、明らかに、落堀(おとしぼり – 穴が空いたような状態)が発生していました。
災害復旧工事とその問題点
台風21号(2004年)に、久崎地区では、護岸が崩壊し、大災害に見舞われました。
災害対策基本法(国の補助が出る)による、災害復旧工事は、現状復帰工事が原則です。
そのため、わずかな浚渫(しゅんせつ)や、パラペットによる、1メートルの護岸のかさ上げなどの、原状復帰の工事が行われたのみで、住民の要望が強かった、護岸内側の遮水化や、川の拡幅工事などは、行いませんでした。
浚渫とは、海や川,貯水池等の水底の土砂を掘り取ること。河川の流路の拡張,航路や泊地の水深の増加などを目的とするほか,埋立てのための土砂を採取するためなどに行われる。ふつう浚渫船によって行う。【コトバンクから引用】
パラペットとは、建物の屋上やバルコニーの外周部の先端に設けられた低い立ち上がり部分の壁。屋根防水の納まり上、重要な役割を持っている。【コトバンクから引用】
台風9号の被害を受け、2009年12月末に、千種川水系の兵庫県の復旧・復興対策が出されました。
佐用町円光寺での計画高水量は、毎秒900立方メートルを下回る、17年に一度の計画であり、このときの雨量による流下能力を、はるかに下回ります。
工事後、再び大きな被害が発生するでしょう。
工事開始場所も工事期間も問題であり、中期的な河川整備計画では下流の負担を考え、千種川水系の下流から、河川整備がなされたため、豪雨時には、河口から17キロメートル付近までしか、工事は進んでいません。
被害が大きかった佐用川地区は、工事が行われなかったのです。