南海トラフ地震の対策として、国が自治体を代表して未公開だった盛り土造成地を公表
盛り土造成地とは、主に高度成長期に入った1950年代以降、宅地開発のために丘陵地を削り、谷や斜面に土が盛られた場所。都市部に多く、阪神大震災や東日本大震災で崩壊する場所が相次いだ。造成時期が古いほうが崩れやすいとされるが、比較的新しく盛られた場所でも被害が確認されている。地面を削って整備された所は「切り土」と呼ばれ、盛り土と混在している地域が多い。【コトバンクから引用】
国土交通省は、大地震(南海トラフ地震など)が発生した場合、液状化や地すべりに備えるため、2019年度中に「液状化マップ」や「盛り土マップ」をウェブサイトで公表することにしました。
市区町村に、10年以上前から求めてきた、調査・公表でしたが、地価下落や費用の負担などから、未公開の自治体が3割強ありました。
これを国が代行する方針に切り替えたのです。
各地の斜面や谷に、盛り土造成地として、宅地開発が進められてきました。
盛り土造成地の全てが、危険というわけではありませんが、1995年に発生した、阪神淡路大震災や、2004年に発生した、新潟県中越地震で、地すべりが発生して、多くの犠牲者が出ました。
2006年以降、国は、元の地盤の傾斜が20度以上、高さ5メートル以上の盛り土の造成地や、3,000平方メートル以上の盛り土を調査しました。
調査した盛り土の場所を示す、地図の公表を、自治体に求めてきました。
2006年の推計では、地震により崩壊する可能性のある盛り土造成地は、全国で、およそ1,000ヶ所もありました。
しかし、自治体の調査は遅れ、1,148自治体(全体の66パーセント)のみ、公表を済ませました。
費用や調査の人手不足や、評判の低下、資産価値の下落などから、調査・公表を躊躇しました。
遅れが目立つ県は、公表率が、岡山県の15パーセント、島根県の11パーセント、千葉県9パーセント、何と栃木県では0パーセントと、公表の遅れが目立ちます。
こうした理由から、600の自治体(未公表)の調査の代行を行い、その結果を、ホームページで公表し、地盤調査の補助率の拡充を図り、崩落防止や地すべりの対策を、自治体に促そうとしています。
東日本大震災では、地下水位の高い地盤で発生した、液状化現象の被害がありました。
これについても、全体のおよそ8割である、1350市町村の代わりに、国が調査し、2019年中に、未公開だった液状化マップを公表します。
大地震の備え 後手にまわる盛り土マップ 地震被災後(仙台・熊本)に公表
大規模な盛り土造成地は、大地震が発生するたびに、被害をもたらしてきました。
被災後に調査に乗り出すといった、自治体の対応が、遅れるケースもあります。
公表が遅れると、我々がリスクを把握できないばかりか、不動産市場の透明性を損ねる可能性もでてきます。
2013年から、仙台市がホームページで公表している、造成地の履歴情報マップでは、黄色や赤色で、盛り土造成地が塗られています。
東日本大震災の発生後、市内の5,000ヶ所で、地すべりなどの、住宅被害が発生しました。
市民から、造成地の状況が知りたいといった、多くの要望があり、仙台市が公表に踏み切りました。
仙台市は、国の基準(元の地盤の傾斜が20度以上、高さ5メートル以上の盛り土の造成地や、3,000平方メートル以上の盛り土)に関係なく、公表に踏み切ったのです。
しかし、2006年から国は、公表を求めてきたのですが、仙台市が対応したのは、東日本大震災のあとです。
2016年に発生した熊本地震では、地割れや液状化、盛り土の崩壊など、およそ15,000ヶ所で、住宅被害がでましたが、調査を終了していた自治体はありませんでした。
のちに調査は進められ、一部の市町村で、結果が公表されました。
公表している自治体でも、国の基準を下回る場合は、調査や公表はされていない可能性もあります。
地価下落の懸念
地価下落につながりますので、盛り土造成地の把握は進みませんでした。
基準が整う前の、古い造成地の場合、斜面を保護する擁壁(ようへき – 崖などの土留めのために造った壁)の強度に、ばらつきがある可能性があります。
盛り土の深さや高さ、また、いつ造成したのかなど、詳細な情報を公表する必要もあります。盛り土造成地とは知らずに、住宅が売買される恐れもあります。
盛り土造成地の対策工事
対策工事を始めた自治体もあります。
2018年10月、兵庫県西宮市では、阪神淡路大震災のあと、震度6強で崩れる可能性のある、市北部の造成地5,300平方メートルで、地すべり防止工事を終了しました。