南海トラフ地震の影響による、からだの健康と病気の予防
南海トラフ地震のような大地震が起こると、普段はあたり前のようにある、ライフラインや、食料の供給がままならず、医療機器も被災します。
このような過酷な環境下がもたらす、病気やケガについて、考えてみましょう。
ストレスへの予防や、対処のポイントを、あらかじめ知っておくことが、震災時のからだとこころを守ります。
寒さから身を守る
冬期には、暖房設備が利用できずに、長時間寒さにさらされますと、危険な状態を招きます。
体温が下がると、免疫力が低下して、感染症にかかりやすくなったり、低体温症を引き起こして、命に関わることもあります。
体温を保持する方法は、下着の上から、新聞紙やビニールをからだに巻き付け、その上に上着を着ます。
また、段ボールや発泡スチロールを敷いて、床や地面からの冷気を防ぎます。
脇の下や首筋など、動脈の通っている箇所を、カイロや湯たんぽで暖めてください。
加熱用のペットボトルに、60度~80度のお湯を入れて、靴下などでカバーすれば、湯たんぽになります。
低体温症が疑われるときは
症状
- 手足が冷たくなって、震えてきます。
症状が重くなると
- つじつまの合わないことを言い出します。
- 震えていた人が、暖まらずに、震えがなくなります。
- 意識がもうろうとします。
回復方法
- 冷気や風を防ぎ、厚着をさせて、毛布にくるめます。
- 体温を上げるために、カロリーや水分を補給してください。
- 症状が重いときは、ただちに、医師の診察を受けてください。
暑さから身を守る
夏期に冷房が使用できないと、暑さが深刻になります。
高温多湿の日や、急に暑くなった日は、屋外ではもちろん、室内でも熱中症や、脱水状態にならないよう、注意が必要です。
熱中症の予防は、窓からの日射を遮へいして、窓は2箇所以上開けて風を通します。
首や脇の下などの、動脈の近くを、ぬらしたタオルなどで冷やします。
水分補給は、30分~1時間おきに、とってください。
熱中症が疑われるときは
症状
- のどの渇きがあります。
- めまいや、立ちくらみがあります。
- 筋肉が硬直します。
- 大量の汗、疲労感があります。
症状が重くなると
- 汗が止まって皮膚が乾燥します。
- 意識がもうろうとします。
回復方法
- 涼しい場所で、衣類をゆるめ、ぬれタオルや、氷などで全身を冷やしながら、風をあおいで送ります。
- スポーツドリンクか、コップ1杯の水に、食塩をひとつまみ混ぜた、食塩水を飲ませます。
- 症状が重いときは、ただちに、医師の診察を受けてください。
脱水症状を予防する
断水により、水分をとる量が不足しますと、脱水症状の危険があります。
脱水症状は、尿路の感染症や、心筋梗塞、エコノミークラス症候群などを誘発します。
特に高齢者は、脱水症状に気づきにくいので、のどが渇く前に、こまめに水分を補給しましょう。
脱水症状になったとき
症状
- のどが渇き、尿の量が減ります。
症状が重くなると
- 全身の倦怠感があります。
- 立ちくらみや、意識がもうろうとします。
- 頭痛や吐き気、嘔吐などがあります。
回復方法
- スポーツドリンクか、コップ1杯の水に、食塩をひとつまみ混ぜた、食塩水を飲ませます。
- 安静にします。
- 体内のナトリウム濃度が低下しますので、水分のみの補給は避けましょう。
- 症状が重いときは、ただちに医師の診察を受けてください。
感染症を予防する
避難所などの集団生活では、カゼやインフルエンザ、感染性胃腸炎などの、感染症が蔓延しやすくなるので、予防対策は必須です。
感染症の予防法は、こまめな手洗いや、うがいです。
水が使えないときは、消毒・除菌用ジェルや、ウェットティッシュなどで、手を清潔にしましょう。
感染症が疑われるときの注意点
- 発熱やせき、下痢などの症状が長引く場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
- 下痢や嘔吐の症状がある場合は、脱水状態にならないように、こまめな水分補給を。
- 排泄物や嘔吐物を処理するときは、直接触ってはいけません。
エコノミークラス症候群を予防する
2004年に発生した、新潟県中越地震では、車中に寝泊まりしていた人に、エコノミークラス症候群が多く発症しました。
車中だけではなく、避難所でも、同じ姿勢で、足を長時間動かさないと、足の静脈に血栓(血のかたまり)ができやすくなり、これが肺の血管を詰まらせ、最悪の場合は、死に至ることもあります。
エコノミークラス症候群の予防法
- こまめに水分を補給します。
- ゆったりとした服装で、日中は歩くなど、からだを動かします。
- 寝るときは、少しでも、足を伸ばせる姿勢になります。
エコノミークラス症候群が疑われるときは
片方の足のふくらはぎや、太ももに、痛みや腫れがでたり、皮膚が赤くなったときは、エコノミークラス症候群の疑いを考えましょう。
ただちに、医師の診察を受けてください。
症状が進みますと、胸の痛みや息切れ、呼吸困難やショック状態から、心肺停止にいたる危険があります。