地震に耐えられる建物か?
地震が来て、もっとも恐れることは、建物が壊れることだと思います。
世界各国で発生した地震で、真っ先に建物の崩壊が、ニュースになります。
土や石で建てられている地域では、住宅の耐震化が、行われていないことが報じられます。
それに比べれば、日本には、厳しい耐震基準があります。
それでも、建物が倒壊するような地震が、何度も発生しています。
そもそもが、地震に強い建物というのは、可能なのでしょうか。
それは、もちろん可能であり、強固にした建物での被害は少なく、人の命も守られます。
反面、本当の強さとか、倒壊しない仕組みが何であるか、現代の科学力を駆使しても、わかっていないのも現実です。
地震対策となると、さらに複雑になります。
地震のほかに、津波に対する対策も必要であり、その他にも意外な不都合も生じます。
一番の例は、2011年に発生した、東日本大震災の、福島第一原発の事故です。
いまだに大きな社会問題となっていて、被害も続いています。
しかし、この事故の原因は、地震で建物が、倒壊したことではありません。
津波で建物が、破壊されたわけでもありません。
原発事故の原因は停電でした。
電気をつくる発電所が、電気が供給されないことで、致命的な事故を起こしたのです。
よく、活断層の上の原発が問題になります。
当然ながら、地震対策は、周到に検討されています。
もちろん、建物だけではなく、原発の機器類にも、地震時の検討を行います。
それも、計算だけではなく、起震機で、実際の地震を再現して、実証してから、工事を行っているのです。
決して擁護するわけではありませんが、事実はそうです。
四国・香川県の多度津(たどつ)にある、世界最大級の起震機は、アメリカも協力して、原発開発のために、建てられたものです。
この試験場で、いくつかの住宅メーカーも、耐震実験を行っていますが、原発建設という国家的なプロジェクトがなければ、このような施設が建てられるはずもありません。
これほど盤石な地震対策を行って、建てられた原発ですが、停電時の予備発電施設が、津波で動かなくなると、活動中の原子炉が、冷却できずに、水素爆発を起こすまでに至ったのです。
地震で壊れない建物はできますが、地震の被害は、複合的であるということです。
地震で受ける被害
地震国日本では、一般の住宅にも、地震対策が求められています。
なかでも、人の命を守るための強さの基準は基本です。
しかし、被災者の話を聞いていると、単純な強度の問題だけではない時代となってきました。
たとえば、東日本大震災では、震源地から離れた東京郊外でも、高層マンションの被害が、ニュースになりました。
販売価格に対する、固定資産税の割安感もあり、高層階ほど人気が集まっています。
この不平等さを、解消するために、法改正が行われました。
すでにタワーマンションに住んでいる人は、対象にはなりませんが、平成29年4月以降に、売買契約を締結したタワーマンションが、対象となります。
ここでは詳しいことは割愛いたします。
震災でも壊れることはありませんでしたが、停電と断水は、高層階で暮らしている人ほど、大きな被害を受けました。
計画停電を含めて、電気が使えなくなると、エレベーターは動きません。
エレベーターだけではなく、電気で利便性を確保していた、現代の生活の中では、トイレも使えなくなります。
断水時にも、トイレは使用できません。
避難施設まで、30階や40階の階段を使って、行き来する必要があります。
どう考えてもそれは無理で、結局、高層階に住む人は、避難所に待避することになりました。
地震の強度が、いくえにも考えられ、倒壊しなくても、高層マンションは、地震に強い家とはいえなくなってしまいました。
大規模な地震のたびに、耐震基準も変わってきました
地震が発生して、しばらくすると、地震に強いことをアピールする、住宅メーカーの広告が流れます。
自社のオーナーに、安心してもらえるといった、大義もありますが、災害に便乗している感も否めません。
そのうえ、各社が勝手に、自社の言い分で、強度をアピールしたら、何が何だかわからなくなります。
現実に消費者の身になっても、どのように比較したらよいか、わかりません。
結局、アピールしている企業だけが強いとう、誤解を与えてしまいがちです。
しかし、少なくとも、どこかのメーカーだけが、強いということは、ありません。
強い家には、それ相応の根拠があって、その根拠によって建てられれば、どの会社でも、強い家を建てることができます。
その地震に対する強度の基準は、基本的に国が決めてきました。
どのメーカーが建てる家も、その基準を元に計画されています。
とことが、じつは、その基準も、大きな地震があって、被害が報告されるたびに、細かく、場合によっては大きく変わってきました。
そのために、建てられて時期によって、結果的には、家の強さも違うということです。
新耐震基準と新・新耐震基準
予備知識として、
旧耐震基準は、1981年5月31日以前の耐震基準です。
新耐震基準は、1981年6月から、2000年5月31日までの耐震基準。
新・新耐震基準とは、2000年6月以降の耐震基準となります。
現行法の始まりは、1950年の建築基準法です。
そして、地震に対して、もっとも基本となる基準は、1981年に導入された、新耐震基準となります。
ずいぶん古くから導入されていますが、いまだに、新耐震基準といわれています。
似たようなことは、たくさんありますよね。
導入前の、1978年に発生した、宮城県沖地震で、家屋やブロック塀などの崩壊で、多くの犠牲者を出したことから、この基準がつくられました。
旧耐震基準では、震度5強程度の中型地震で、建物が損傷しないことを求めていましたが、新耐震基準は、震度6~震度7の地震で倒壊しないという、基準に変わりました。
つまり、人の命を守ることが、建物の大きな役割として、位置づけられたと考えられます。
そして、構造体になる材料の強度を、確認することに加えて、倒壊につながる建物の、変形量を計算するようになりました。
今でも、この新耐震基準以前に建てられた建物は、基本的には耐震性がないものとして、考えられています。
そして、1995年に阪神淡路大震災が発生しました。
このとき、新耐震基準による、耐震性も検証されました。
倒壊されないとされていた、高速道路が崩壊するなど、ショッキングな被害がありました。
地震のときに、被害を及ぼすといわれていた、地盤面の加速度も、関東大震災の倍近くを計測しています。
その5年後の2000年に、新たに建築基準法が改正されます。
これが、新・新耐震基準です。
これまで使われていなかった、金物による補強等が、全棟に義務化されました。
この間、わずか、十数年でした。
これ以上の建築年数では、不適合であることを意味します。
住宅ローンの返済は、30年以上あります。
まだ、ローンも支払い終わっていないのに、現在住んでいる家の、耐震性が足りていないということになります。
それ以降も、耐震改修促進法や、耐震性を確保する法律は施行されています。
これから家を建てるのあれば、耐震技術を駆使できます。
しかし、古い既存の住宅に住んでいるのであれば、どうしたらよいのでしょう?
この続きは、ブログで発信していきます。