あなたは現在、どんな家に住んでいますか?
大きな地震があれば、被害状況を調べれば、基準が正しいのか、確認することができます。
その実証を重ねて、さらに、国の基準も、進化していく可能性もあります。
2000年の耐震基準から、大災害をもたらした、熊本地震と東日本大震災といった、これまでにない地震を体験しました。
地震に加えて、津波という災害への対策は、どうしたらよいでしょう。
震度7の前震と本震を、続けて受けるときの、耐震性はどうなのでしょう。
すでに、新しい基準を、心配する声が、あるのも事実です。
現実に発生した地震の中で、これまでの基準に沿った耐震性は、どのくらい効果があったのでしょう。
2016年4月に発生した、熊本地震で、震源地となった益城町(ましきまち)の、被害状況を見て見ましょう。
新耐震基準以前の木造住宅では、およそ、半分が倒壊、もしくは、大破しました。
しかし、逆にいえば、新耐震基準以前の住宅でも、半分は大破に至っていません。
一方、新耐震基準以降の建物でも、およそ20パーセントは倒壊、大破しました。
さらに、当時、築16年以下の、現行法下の建物は、半数以上が無被害でした。
ただし、7パーセントの倒壊、大破がありました。
壊れやすい建物の傾向は、基準通りですが、とはいえ、基準に沿っていても、壊れないとは限りません。
このデータをもとにして、倒壊の可能性を探ってみましょう。
どれだけの家が、危険にさらされているのでしょう?
日本には、どれだけの家があるのでしょう。
総務省の調査では、5700万戸強あります。
そのうち、空き家が13パーセント超えたことでも、問題になりました。
この20年で1.8倍にものぼります。
なかには、持ち家もあり、貸家もあり、戸建てもあれば、共同住宅もあります。
さらには、木造や鉄骨、コンクリート造、プレハブ住宅もあります。
戸建て住宅では、圧倒的に木造住宅が多く、鉄骨やプレハブ住宅は、わずかしか残っていません。
共同住宅では、古いほど木造住宅ですが、近年になるほど、ツーバイフォー(2×4)や、鉄骨プレハブが増えています。
その数を合わせると、およそ900万戸になります。
日本の、住宅への地震対策は、世界の中では、明らかに先進的で、厳しい基準であると考えます。
しかし、住宅というものは、一気に変えることは、とてもできません。
数々の地震で被害を受け、分析して、基準が強化されても、対応できない家は、残されています。
国土交通省は、2020年までには、耐震化率95パーセントを目指し、古い住宅650万戸に、耐震補強を進めています。
しかし、熊本地震の教訓は、それ以上に、対応しなければならない家があることを、教えてくれました。
また、日本のどこかで、大きな地震が発生すれば、900万戸に、危険が迫っています。
そして、その家には、2000万人以上の人が、住んでいます。
ひとつの小学校区で考えれば、約400万戸であり、1000人が住んでいます。
その1人にならない可能性はゼロではありません。
木造住宅は、地震に強いのでしょうか?
熊本地震で、倒壊・大破した家で、もっともデータ数が多いのは、木造住宅です。
さらに、900万戸の、木造住宅の耐震化を考えますと、木造は弱いのではないか、と考える人もいるでしょう。
おとぎ話の三匹の子豚でも、木造住宅は、オオカミに簡単に吹き飛ばされてしまいます。
ただ、勘違いしてはいけないのは、過去の大地震を含めて、鉄骨造やコンクリート造にも、全壊・大破の被害はありました。
木の素材を、しっかり知れば、安心できて、価値も上がるのではないでしょうか。
本当は、木は、理想的な構造物なのです。
樹木という生物の、存在戦略を知っていただくのがよいでしょう。
我々が、住宅に使用している木材は、樹木として、成長してきた、生物の一部です。
炭素50パーセント、酸素44パーセント、水素6パーセントの、炭素化合物でできています。
酸素と水素は、値から吸い上げる水(H2O)があれば足ります。
肝心な炭素については、樹木は、空気中の二酸化炭素(CO2)から、摂取しています。
そして、光合成によって、余った酸素をはき出し、身となる炭素化合物をつくっていきます。
ですので、樹木にとって、葉っぱが口であり、消化器官のようなものです。
つくられた炭素化合物の半分が、セルロースという繊維質です。
最近は、このセルロースナノファイバーという、新素材が注目されています。
この素材の強度は、鋼鉄の5倍です。
セルロースナノファイバー(cellulose nanofiber)とは、幅15ナノメートル程度まで細くした木のセルロース繊維。これを漉(す)き上げて紙を作ると、軽くて丈夫で透明なプラスチックのような紙になる。樹脂、ゴム、ガラスなどとの複合材料の開発が進められている。CNF。(コトバンクより引用)
家を建てるのに使用される樹木は、成長すれば、高さ20メートルにも達します。
より高く伸びた方が、光合成にも有利です。
自然の摂理の中で、このような強い素材を生み出しているのです。
木は鉄よりも強いのか?
気の強さを比較するのに、比重あたりの強度で、確認することもできます。
これを、比強度(ひきょうど)といいます。
比強度(ひきょうど、英語: specific strength)とは、強度重量比・重量比強度 (strength‐to‐weight ratio, strength/weight ratio) は、物質の強さを表す物理量のひとつで、密度あたり引っ張り強さである。 つまり「引っ張り強さ ÷ 密度」で得られる。(ウィキペディアから引用)
木は水に浮く軽い材料であり、鉄は木の20倍の重さがあります。
この鉄と木の棒をたてて、ぐんぐん伸ばしていくことを、頭の中で想像してみてください。
ずっと伸ばしていくと、やがては鉄も木も、自分の重さに耐えられなくなり、曲がってしまう瞬間がきます。
この時の長さを鉄と木で比較しますと、鉄は木の、半分ほどの長さで、曲がってしまいます。
つまり、木のほうが、鉄よりも、強いのです。
地震に対する強さを検討するときには、重たい家ほど、力がかかると想定しますので、この比強度と似た状況だと考えられます。
また、木には、セルロースのほかに、リグニンという成分が、20パーセントあります。
この素材は腐食しにくく、虫や菌に害されにくい性質を持っています。
そうでなければ、樹木は、森の中で、生き残っていくことはできません。
つまり、木は腐りにくく、長持ちする材料であるといえます。
とくに、しっかり乾燥させた木は、よけいに、虫や菌が、寄りつかなくなります。
こうした強さも、木が住宅の構造に、適している理由のひとつになります。
木造住宅は、地震への強度さえ保たれていれば、決して価値が失われるものではないということです。