スケルトンとインフィル
家の資産価値を考えるときには、構造上の強度は、最も重要な要素となります。
強度のない建物に、どんなに良いインテリア空間をつくっても、倒壊の不安と、一緒に住みたいと思う人は少ないでしょう。
その最も良い事例が、構造強度偽装の事件です。
建築士の事件と、大手企業が手がけた、マンションの杭の偽装事件がありましいた。
いずれも、解決には、建て替えが前提となり、結果的には、資産価値はゼロと見なされてしまいます。
こうした偽装事件の根底には、構造に対する軽視があります。
デザインが優先されて、構造に無理を強いているケースや、経済設計を唱えて、ぎりぎりの強度を狙うケースなどです。
皮肉なことに、後者では、構造計算を駆使して、弱い建物を設計していることになります。
理論的には、間違えているとはいえませんが、一歩間違えると、建築士の、耐震偽装事件となることも考えられます。
こうした事態を避けるためにも、スケルトン・インフィルという、考え方があります。
スケルトン・インフィル住宅(SI住宅)とは、建物のスケルトン(柱・梁・床等の構造躯体)とインフィル(住戸内の内装・設備等)とを分離した工法で、分譲マンションなどの集合住宅に多く見られるが、ユニット工法による戸建住宅も同様の考え方で造られている。(※ウィキペディアから引用)
スケルトンとは、長く残して使うべき構造体であり、インフィルは、時代や好みに合わせて変えていく設備や、インテリアなどです。
しっかりと、スケルトンを設計してさえおけば、後から、ライフスタイルや、デザインが変化しても、受け止めることができます。
シンプルな器を用意しておけば、盛りつけ次第で、いろいろな使い方ができるのと同じことです。
スケルトンは器であり、インフィルは器に入れる料理や、盛りつけのテクニックです。
基本的には、長期優良住宅も、この考え方が基本です。
たとえば、デザインや用途などを変えるために、長く持たせるべきスケルトンを傷つけることにならないよう、あらかじめ、設計されていなければなりません。
欧米では、比較的一般的な考え方であり、同じスケルトンでも、外装の窓や窓飾り、壁の種類や、飾りなどで、様式が決まります。
そして、自分流に、自由に、インテリアデザインを、楽しむことができます。
古民家が残される理由
日本でも、このスケルトン・インフィルという考え方は、決して新しいことではありません。
昔から日本にある、古民家や古建築では、柱はしっかり格子状に配置されている、スケルトン建設でした。
柱間には、立派な梁(はり)が架けられていて、仕切りの襖(ふすま)や障子(しょうじ)を外すと、大空間になります。
そして、現代の私たちの中にも、古民家での、組んである構造材を見て、思わず、かっこいい、と感じる人も多くいるでしょう。
構造材を活かしながら、現代流の暮らしに、対応している人もたくさんいます。
資産価値が、失われることもありません。
昔のように、木材を贅沢に使うことは、さすがにできませんが、今の家でも、構造強度が計算されて、地震災害にも倒壊しない、スケルトンであることがわかれば、家の資産価値が認められることになるでしょう。
スケルトンの資産価値が認められれば、現代の社会が抱えている、空き家問題や、地域活性化にも貢献すると考えられます。
さらに、資産価値に対して、リバースモーゲージができるようにると、社会保障の問題も、解決に向かう可能性もあります。
リバースモーゲッジ(Reverse mortgage)とは、自宅を担保にした融資制度の一種。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保するための手段。(※ウィキペディアから引用)
住宅というのは、まさに、国の社会資本として、考えられるべきものなのです。
そして、住宅のスケルトンを守ることは、自分の将来を守ることにも、通じているのです。