地震対策 既存住宅の耐震化
壁倍率の高い耐力壁があると、より地震に強い家になることは、今までのブログを読まれれば、想像できると思います。
ただ、現在の構造計算では、地震よりも、強風に対する強度を、必要とするケースが、予想以上に多いのです。
細長い建物で多く、3階建てになればなおさらです。
どちらにせよ、強度を確保するには、高い倍率の、耐力壁を必要とします。
また、壁倍率6.3倍の耐力壁が、新築住宅で活用できるのは当然ですが、既存住宅の耐震化を考えるときに、とても有用なのです。
新築で強い家にするのに、必要なだけ壁を配置して、間取りをつくればよいことです。
たとえ壁倍率が低くても、その分、余計に壁をつくれば、強度は確保できます。
しかし、既存住宅では、すでに決まった間取りの中で、生活しています。
耐力壁を配置できる箇所は決まっています。
さらに、強度を増すために、新しい壁を建てると、不自然な間取りになってしまうでしょう。
耐震化を必要としている、既存住宅がたくさんあることは、まちがいありません
耐震化は、人の命を守るうえでも、大切なことです。
とはいえ、すべてを建て替えることは、不可能です。
既存住宅の耐震化には、壁倍率の高い耐力壁があると、進めやすくなります。
しかも、合板を張って、所定の耐震ガセットを取り付けるだけですので、活用法としても、注目されると思われます。
地震対策 耐震化は外壁から
既存住宅で、強い壁を配置するには、できるだけ、外壁に設置するのが適しています。
それには、いくつかの要点があります。
1つ目は、壁の中にある柱と、上部の梁、そして、床下の土台を、しっかり緊結(きんけつ)しなげればなりません。
緊結(きんけつ)とは、建築などで、部材を留め具などで結合すること。屋根の瓦かわらの取り付けなどにもいう。 「ボルトで-する」(※コトバンクより引用)
内壁で、より的確に行うには、壁や天井をはがさなくてはなりません。
そうしなければ、結局は弱い壁になってしまいます。
弱い壁では、設置箇所を増やさなければなりません。
2つ目は、耐力を受ける壁の下には、強い基礎が必要となり、基礎の補強をしなければなりません。
外壁の下であれば、基礎の補強工事も、比較的簡単です。
3つ目は、強さのバランスをとるためには、できるだけ、建物の重心から遠い箇所に、壁を配置するのが理想的です。
それには、外壁部が最も適しています。
許容応力度計算では、偏心率(へんしんりつ)を重視します。
偏心率とは、建物の重心と、強度のバランスを意味する剛心(ごうしん)とが、どれくらい離れているかを示す指数です。
できるだけ、重心とは離れないようにするのが理想です。
強度が偏っていては、計算通りに、建物が揺れるとは想定できません。
重心よりも遠い位置にある強い壁が、最も偏心率に影響しますので、ここでバランスがとれれば、偏心率をコントロールできるのです。
このような構造の考え方は、北米のツーバイフォーでは、一般的に行われています。
外壁を固めて、強度を確保するというのは、一般的な住宅の、構造体の基本的なことといえるでしょう。
まるで、家に鎧を着せたかのようなイメージで、住んでいる人をガードしてくれるのです。
4つ目は、利点として、外壁からだけの工事で、耐震化が可能であれば、居住者は住んだままで、進めることができます。
工事費だけではなく、引っ越しや仮住まいの費用、仮置きの倉庫代などの、余計な出費がなくなります。
ただし、壊した外壁を修復する必要がありますので、その分の費用は必要です。
ただ、強い耐力壁であれば、工事箇所も少なくてすみます。
また、外壁の修繕も、定期的に行う必要があります。
耐震をきっかけに、外見が新しくなると思えば、負担は少なく感じるかもしれません。
逆に考えれば、築20年、40年経って、外壁の吹き替えを検討するのであれば、外壁工事のついでに、耐震化ができますので、思った以上に、安価で強い家にすることができるでしょう。