地震に強い家と弱い家 地震のエネルギーを吸収する制震装置の選び方

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地震対策 制震装置の種類は?

身近なもので、わかりやすいものでは、制震装置は、自動車のダンパーによく似ています。

建物に使用されている制震装置には、これ以外にも、油圧ダンパー、摩擦、減衰ゴム、金属などの種類があります。

油圧ダンパーの基本的構造は、油に圧力をかけて、細い管に通します。

油は流動性のある液体ですが、水に比べますと、粘性があります。

仕切られたピストンに、狭い管をあけて動作させれば、油の粘りけと、穴なの大きさによって、抵抗が生まれ、速度を落とすことで、動きが抑えられます。

構造は単純ですので、自動車に使用されているダンパーは、ほとんどが、この油圧ダンパーです。

その他にも、身近なものでは、引き出しや、ドアの開け閉めなどにも、小さな油圧ダンパーが使われています。

摩擦による制震は、もっと簡単な構造です。

簡単な例では、やはり自動車のブレーキです。

ブレーキは、振動の速度を下げるのに役立ちます。

そして、運動エネルギーを、熱エネルギーに変える代表的なものです。

建物の場合、自動車のブレーキを踏むように、加減して速度を調整することはできません。

滑りによる移動から、元の位置に復元することも、考えおく必要があります。

ゴムも基本的な制震素材です。

バネのように跳ねる性質と、クッションのように、振動を抑える性質があります。

この性質をコントロールして、生産できる技術が発展してきました。

よく跳ねるゴムボールも、跳ね方を抑えるゴムボールもつくることができます。

後者が制震用のゴムになります。

さらに、ゴムの硬さによって、変形量による、制震の利かせ方を調整できます。

ただ、長期間使用しますので、劣化の心配や、また、環境変化の心配もあります。

金属による制震は、ゴムと同じように、跳ね方を抑えたバネのようなものです。

変形することで、エネルギーを吸収して、振動を抑えます。

劣化の心配もなく、油の漏れる心配もありません。

ただ、金属疲労はあり、何度か変形しているうちに、抵抗値は減少します。

特に、大きな変形があれば、金属疲労の前に、金属塑性変形(きんぞくそせいへんけい)がおき、制震性も劣化します。

地震対策 小さい変形で制震性を発揮できる?

どの制震装置にも、それなりに長所があります。

制震の性能だけではなく、コストや耐久性、工事のしやすさなどの要素もあります。

それでも、絶対に抑えておかなければならないポイントは、いかに小さな変形から、制震性を発揮できるかです。

変形量が大きくなれば、制震効果が発揮されるのは当たり前ですが、大きな変形が起きているときには、すでに、建物にも害が及んでしまう可能性が高いのです。

その意味では、速度に依存するものよりも、変形量に比例する制震装置のほうが、良いといえます。

変位依存性の制震は、摩擦と金属です。

短所に対する対策が技術力です。

油圧ダンパーの長所を活かしながら、微小変形に対応しているダンパーもあります。

車のダンパーと住宅用のダンパーの違いとは

車のダンパーと住宅用のダンパーは、全く違うものとして、とらえなくてはなりません。

車のダンパーは、歴史も技術も、使用量も申し分ありません。

しかし、頻度も耐久性も、環境も異なります。

住宅用の制震装置の、いちばんのポイントは、小さな変形から、制震性が効き始めることです。

これは、車のダンパーには、求められていない性能です。

車のダンパーに求められているのは、高温の対策です。

ダンパーは走行している間、常に動いていますので、摩擦熱で高温になります。

高温になると、オイルが膨張して、体積が変わります。

ガス室をつくっている、オイル体積が、調整できる仕組みを備えています。

このガス室があっては、微小変形での制震効果期待できません。

そもそも、住宅では、車のダンパーほど、高温になることは、考えられません。

株式会社プロジットのウィンダンパー(Windamper)は、住宅専用のダンパーとして、開発されたものです。

しかも、速度依存の油圧ダンパーで、微小変形に対応できることを目的としています。

ウィンダンパーの制震は、壊れ始める5分の1から

その効果を発揮するには、オイル室の中心にある、ピストン構造がポイントになります。

オイルが動く、ピストン孔の工夫により、きわめて小さな変形から効果を発揮します。

木造住宅の構造となる、筋交いが壊れ始める、およそ0.6度の傾きの、5分の1である、0.12度から、有効な制震性を発揮します。

この傾きを、一般的な住宅で計算しますと、1階の床と、2階の床が、3㎝ずれると、補修が必要な程度に壊れるのに対し、ウィンダンパーが、制震性を最大に発揮するのは、2階の床が6㎜ずれたときからです。

変異依存性の制震装置では、変形量が増えるにつれて、制震性を発揮しますが、制震が大きく効果を発揮するころは、すでに、損傷が始まっています。

早い段階で、制震効果を発揮して、効果を持続させるという、バイリニア特性は、ウィンダンパーの最も重要なポイントのひとつです。

バイリニア特性とは、制震装置がエネルギーを吸収する「減衰力」の増大に伴って、躯体を痛めることのないように考えられた特性です。(※ウッド・アート・スタジオ株式会社から引用)

また、この効果を活かすためには、ねじひとつが緩んでも、無駄になります。

細心の注意が必要になります。

ところが、耐震のときと同じように、ここでも、新しい問題があります。

小さな変形で、効果を発揮するということは、固いということです。

しかも、油圧ダンパーは、速度依存しますので、最初の地震波で、急激に揺れると、さらに固くなる特性があります。

制震のための、油圧ダンパーのほとんどは、柱と梁に取り付けられています。

このとき、ダンパーが固すぎると、テコのように働いて、接合部に、大きな負担をかける心配があります。

また、柱は、材の中間部に取り付けられているので、柱を、通常はあり得ないほどの、折り曲げる力も発生させます。

ウィンダンパーでは、バイリニア特性を持たせると同時に、速度による制震性能を、低減できる設計になっています。

ですので、変形量が小さくて制震性が働きながら、固さで大きな負担をかけることはありません。

車のダンパーとは違い、住宅用の制震ダンパーを、真剣に考えると、このように固さと優しさが、共存した設計が必要なのです。