地震に強い家と弱い家 免震(めんしん)は建物ではなく、地盤の対策

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地震対策 建物を支えているのは地盤

免震を実現するには、建物をのせる基盤の下に、さらに基礎をつくる必要があります。

建物と基盤は一体であり、基礎は地盤と一体です。

ただし、免震対策をしても、建物には、耐震性は必要です。

基礎と建物を耐震で考え、地盤は免震と考える方が自然です。

この考え方は、大きな発想の転換でしょう。

それは、日本古来からの、建築方法にもつながっています。

建物を建てる基礎までが、地盤であり、それがあって初めて、柱を立てて建物が完成するものと、考えていたのでしょう。

現代では、地盤を扱うのは土木であり、建物は建築です。

建物は連続的に考えないと、力の流れが計算できません。

しかし、土木は、連続的には考えません。

橋は、橋脚とくっつけないことが、強度を保つための基本であり、道路は一体ではなく、どこかで切れるのが当たり前です。

こう考えると、土木的な地盤対策の中に、免震の答えがあるのではないでしょうか。

たとえば、2015年9月に、茨城県常総市で、鬼怒川の堤防が決壊して、奇跡の白い家が、話題になりました。

多くの人が、白い家の建物の強さに驚きました。

しかし、周りを見ると、建物が奇跡なのではなく、地盤の問題と考えられるのです。

流された家のあとを見ると、基礎から、ひっくり返されている現場があります。

この状況になれば、建物の強さは、もはや関係ありません。

ただ、河川沿いの軟弱地盤に、杭を打って建てられのが、白い家でした。

幸いなことに、流れてきた2棟の家が、水を遮断してくれたおかげで、地盤が流れずにすんだのです。

つまり、白い家は、流された家に助けられたのであり、家の強度よりも、地盤の問題だったのです。

地震対策 杭がない時代の建物の地盤は?

現代のような、建築技術がなく、支持地盤まで届かせるような、杭がない時代にも、多くの建物が建てられてきました。

社寺建築の塔や堂はもちろんのこと、昭和の時代も、ほとんどは現代のような、杭はありません。

では、その当時に建てられたものは、全部がだめだったのでしょうか?

たとえば、1914年に建てられた東京駅は、良い地盤だったとは思えません。

しかも、まともな杭は、使用されていません。

そのうえ、伝統的な木造建築とは異なり、重たい赤レンガ造りになっています。

それでも、関東大震災で無傷でした。

すくなくとも、杭がなければ、強い建物は造ることができない、というのは、正しいとはいえないでしょう。

東京駅の地盤に使用されていたのは、松杭ですが、1本の木からつくる杭は、10数㍍でしょう。

支持地盤につなげるのではなく、まったく別の考え方がありそうです。

そもそも、日本の伝統建築物には、地業(じぎょう – 建築をする前に地面をならして固めること。地がため。また、建築物の基礎工事)といった、地盤への工事手法がありました。

その代表的な例が、建物を建てる礎石の下に、施工された版築(はんちく)です。

版築(はんちく)とは、土をつき固めて建物の土壇や土壁を造る方法。一般に建築する範囲の土を掘下げ,そこに別の土と,粘土あるいは小石,瓦などを交互に入れ,つき固める。中国の殷代には確実にこの工法があり,強固な基礎の上に大建築が可能となった。日本でも若草伽藍跡の調査によってこの工法が判明し,寺院,官衙の調査に飛躍的前進をもたらした。(※コトバンクより引用)

いわば、地盤の改良です。

版築は、深く掘ることが大事です。

掘った地盤に、にがりと粘土を混ぜ込んだ土を、3㎝ごとに重ねて、突いて固めていきます。

積層させることで、強くなるのです。

地盤は、掘り起こせば自然のものではなくなり、昔の人は、人が手を加えるものは、手間をかけなければいけないと、考えていたのでしょうか。

地震対策 土に浮かせる基礎

さらに、フローティングの基礎もあります。

名の通り、建物を軟弱地盤の土の上に、浮かべるということです。

われわれが、普通に立って歩いて生活している地面を、水のように考えるなんて、なかなか信じられる話しではありません。

しかし、地震で液状化が起きた、地域の被害を見ると、思い当たる現象があります。

土の中に埋められた下水管が、マンホールと一緒に、地上に押し上げられる現象です。

普段は動かないと思ったものが、簡単に押し上げられてしまいます。

われわれは、地球の重力の中で生活していて、普段は重力を意識しませんが、じつは、とても大きな力を持っています。

液状化で下水管が浮いたのは、土管の周りの土砂が、とても重たくて、沈んだ結果です。

土管はコンクリートでできていて、重たそうに思いますが、中はほとんど空気ですので、水に浮く鉄の船のように、浮いてしまいます。

アルキメデスはお風呂に入ったとき、お風呂からあふれ出た水の量の分だけ、重力とは反対の方向に、押し上げられている力があることを発見しました。

それが、浮力です。

自分の体の水に浸かっている体積分が、水に置き換えられたと考えます。

同じ考え方から、フローティングの基礎は、置き換え工法とも呼ばれています。

これであれば、空に飛び立った鳥が、地震の影響を受けないように、地震が発生する地盤から、離れている分、免震のように、影響を受けにくくなる可能性があります。