巨大地震の津波による被害想定(河川堤防被害、液状化と側方流動)

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東日本大震災や阪神淡路大震災での河川堤防の被害

沈下した堤防から、津波が侵入しました。

地震により、河川堤防は液状化し、側方流動(そくほうりゅうどう)して、沈下してダメージを受けます。

側方流動とは、地震で地盤が液状化した際に、地盤が水平方向に移動する現象。 水道管などの地下埋設物が破損したり、基礎杭が破壊されて建物が傾斜・倒壊するなどの重大な被害が発生する場合がある。【コトバンクから引用】

阪神淡路大震災で、淀川下流左岸の土手が、1.8キロメートルにわたり、最大3メートルも沈下して、土堤が崩壊しました。

兵庫県や大阪府に流れる淀川水系の支流、猪名川でも大きな亀裂が入り、堤体(ていたい – ダムや堤防の本体)の天端(てんば – 堤防やダムの最上面)に、およそ1メートルの段差ができました。

兵庫県を流れる武庫川でも、河川敷や堤防沿いの道路に、亀裂が入りました。

東日本大震災でも、河川の堤防が沈下して、遡上した津波が越水(えっすい – 河川の水が堤防を越えてあふれ出すこと)しました。

これが、住宅地に流れ込んで、甚大な被害を被りました。

大川小学校の悲劇がこれです。

阪神淡路大震災や東日本大震災により損傷した河川堤防

河川堤防の被害を、近畿地方整備局(2001年に建設省、近畿地方建設局と、運輸省、第三港湾建設局の一部を統合)で確認しますと、崩壊や亀裂が発生したのは、77箇所でした。

その中で被害が大きかったのは、32箇所です。

淀川では、砂質土(粗粒分を50%以上含む、粒径が2.0m以下)を中心とする、ダムや堤防の盛土の地層と、その下に沖積層(ちゅうせきそう)が存在します。

沖積層(ちゅうせきそう、alluvium)とは、約2万年前の最終氷期最盛期以降に堆積した地層のこと。【ウィキペディアから引用】

水に飽和された沖積層の厚さは、およそ2メートルから6メートルです。

とても軟弱な沖積粘土層が、沖積層には存在しています。

沖積層は、水に飽和していて、暖かく、とても液状化しやすい層です。

もっとも甚大な被害を受けたのは、河口に近い淀川左岸堤防の酉島(とりしま)周辺です。

ここでは噴砂(ふんさ)もありました。

噴砂とは、(特に地震時に)砂が地下水とともに噴出する現象。【コトバンクから引用】

阪神淡路大震災により、沖積層である堤体基礎が、液状化したことを示しています。

液状化した地盤の層では、横方向に流れる側方流動がありました。

側方流動により、堤体の基礎地盤は、支持力を失って、本体部分が陥没しました。

これにより、コンクリート製の、特殊堤も崩壊して、落ちて大破したのです。

液状化で、淀川右岸堤防も破壊され、1.8メートルも沈下して、水平移動が護岸で生じています。

右岸堤体が左岸に比べて、被害が小さかったのは、地盤改良として、サンドパイル(強固に締固めた砂杭)を地中に造ったからです。

サンドパイルが、減災効果を発揮したのです。

兵庫県の猪名川水系では、液状化で神崎川の堤防全体が、10~15センチ程度沈下しました。

堤防天端(ていぼうてんば – 堤防の一番高い部分)の中央が、680メートル程度割れ、すべりが発生したのです。

大阪市西淀川区の中島川では、コンクリート護岸の法面(のりめん -切取り・盛り土などでできた人工的な斜面)に、およそ1キロメートルの亀裂が入りました。

満潮時に漏水して、建物や工場などが浸水しました。

およそ10センチ、天端(てんば – 堤防やダムの最上面)が沈下し、堤防法面(切土や盛土により作られる人工的な斜面のこと)では、亀裂が入り、盛土の被害が発生しました。

大阪市西淀川区の中島川周辺の沖積層は、およそ4メートルの厚さがあり、N値は緩く5以下で、この地層は液状化しやすいため、堤防が変形しました。

N値とは、土の硬さや締まり具合を表す単位。重さ63.5キロのハンマーを75センチの高さから落とし、測定用のさし棒を30センチ打ち込むのに要する打撃数。【コトバンクから引用】

兵庫県を流れる武庫川も、およそ20センチから1メートル、天端(てんば – 堤防やダムの最上面)が沈下しました。

堤防も1メートル以上の亀裂が生じ、法面(のりめん – 切土や盛土により作られる人工的な斜面)は、大きくはらみ出しました。

噴砂もあり、堤内側では円弧すべり(斜面や基礎が円弧上のすべり面によって破壊すること)が生じ、ました。

尼崎にある甲武橋(こうぶばし)下流の、右岸堤防天端に、亀裂が入りました。

東日本大震災では、堤体(ていたい – ダムや堤防の本体)が陥没し、堤体の盛土が液状化しました。

そこへ、遡上した津波が侵入して、甚大な被害となったのです。

河川堤防損傷からの教訓

被害が大きかった河川堤防は、後背湿地(こうはいしっち)や旧河道です。

後背湿地とは、広義には、河成堆積低地(沖積低地)や海成堆積低地(浜堤平野など)の微地形一種で、主に自然堤防や浜堤などの微高地の背後に形成された微低地をいう。バックマーシュとも呼ばれる。このうち、海成堆積地形の微低地はとくに堤間湿地(堤間低地)と呼ばれる。狭義には、自然堤防の背後の低平地(後背低地)のうち、より低湿で湿地状の部分をいう。【Wikipediaから引用】

ここは、沖積砂層(流水によって運ばれてきた土砂などが堆積たいせきした砂の層)などの、液状化しやすい層がある地域です。

堤防被害は、元の地盤条件の重要性が、大きくかかわっていることが判明しました。

堤体基礎地盤の重要性が、明らかとなったのです。

サンドパイルなどにより、地盤改良工事が行われた箇所は、堤体基礎地盤が沖積砂層でも、被害は少なかったのです。

土を多用した自然型護岸では、甚大な被害は発生しませんでした。

各河川の被害が大きかったのは、コンクリート護岸でした

この事実は、将来必ず起こる、南海トラフ地震の対策として、大きな重要性を秘めているのです。