ホテルローヤルよりおもしろい
著者プロフィール
桜木紫乃(さくらぎ しの)
2001年、「瑠璃色のとき」北海道新聞文学賞候補
2002年、「雪虫」オール讀物新人賞受賞
2012年、「ホテルローヤル」直木賞受賞。「ラブレス」島清恋愛文学賞、釧新郷土芸術賞受賞。
裁判所でタイピストとして勤務。その後専業主婦となる。
二人目の子供を出産後、小説を書き始める。
15才の時に、釧路で父親がラブホテル「ホテルローヤル」を開業。
その他の作品、
氷の轍(わだち)
ブルース
無垢の領域
蛇行する月
誰もいない夜に咲く
ワン・モア
恋肌
風葬
氷平線
など多数の著書。
長編小説「裸の華」~あらすじ~
横浜のストリップ小屋で踊った正月公演で、左足を骨折。
ひざにボルトを入れて、リハビリを続ければ、またステージに立てる。
そう、思っていた。
ダンスのターンが怖い。何度試しても、ダメ。
得意技のターンができなければ、続けることなんかできない。お客を喜ばせることなんてできない。
ノリカにだって、矜持(きょうじ_誇り)がある。
気づくと四十路になろうとしていた。
ストリッパーの舞台から降りて1年。
クリスマスイブ、故郷の札幌に戻ったノリカ。
店舗を購入する際、携(たずさ)わった、不動産屋の社員、竜崎。
まるで「のび太」のような風貌、とノリカは密かに思う。
その竜崎との、のちの関わり。
ダンスシアターを経営。
2人の若いダンサーを雇うことに。
明るい性格の瑞穂と、寡黙(かもく)な、みのり。
「ダイヤの原石がここにある」
みのりのダンスを見てノリカは思う。
全身がバネだ。
ダンスをするためだけに生まれてきた、みのり。
「私の踊り、余裕ありませんか。見ていて楽しくないですか」
そんなことを口にするみのりに、何をどう教えていこうか……。
才能ある若き二人のダンサーに支えられ、ダンスシアター「NORIKA」をオープン。
「ノリカちゃん、探したよ」
入ってきた客に言葉をなくすノリカ。
ストリッパー時代に、客としてきていた、サンタクロースのような体型の、オガちゃんだった。
「ボク、もう一度、ノリカちゃんのダンスで、タンバリンを振りたい」
オガちゃんこと、小笠原のリクエストに応えるノリカ。
「ありがとう、さようなら、ノリカちゃん」
そういって、タンバリンをノリカの手に。その後、小笠原は……。
客足も少しずつのびるようになり、地元のテレビ局が取材にくる。
そして、みのりの才能は、映画のプロデューサー大滝の目にとまる。
感想
この小説は、天才ダンサー、浄土みのり(じょうどみのり)の物語でもあるとも、言えるのではないでしょうか。
ノリカの物語に深く関わる、不動産業者の竜崎もたいへん興味深い人物です。
そして、数奇な運命のオガちゃん。
ストリッパー時代の師匠、志津香との衝撃的な出会い。
「いっぺん脱いだ女が、裸以外で稼ぐ難しさもよく知っている」
ノリカが世話になった、神奈川県の大和ミュージックのママの言葉が、脳裏に。
そして、サブちゃんとの再会。
ニューハーフの歌手、角倉さとる(かどくらさとる)など、際立つ登場人物が物語を、ギュッと濃くしています。
全てが順調に進むかと思いきや、ダンサーの一人、桂木瑞穂(かつらぎみずほ)が……。
序盤から最後までどんでん返しが続きます。
「ホテルローヤル」以上のおもしろさがあり、物語はスピーディに展開していきます。
ぜひ、ご購読を。
小説すばるの2015年1月から2015年12月までの掲載でした。ちょうど、池井戸潤の「陸王」も掲載されていました。これも感動の物語です。