直木賞作家「半沢直樹」の池井戸潤著書、渾身の力作「陸王」。衰退しつつある足袋メーカーの零細企業が再起をはかる大プロジェクト

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陸王

著者プロフィール

池井戸潤(いけいどじゅん)

 西暦 記事
 1998年 「果つる底なき」で第44回江戸川乱歩賞受賞
 2000年 「M1」で吉川英治文学新人賞候補
 2006年 「空飛ぶタイヤ」で第136回直木三十五賞候補、第28回吉川英治文学新人賞候補
 2008年 「オレたち花のバブル組」で第22回山本周五郎賞候補
 2010年 「鉄の骨」で第142回直木三十五賞候補、第31回吉川英治文学新人賞受賞
 2011年 「下町ロケット」で第145回直木三十五賞受賞、第24回山本周五郎賞候補

・民王

・ようこそ、わが家へ

・花咲舞が黙ってない

・ロスジェネの逆襲

・銀翼のイカロス

・不祥事

その他、著書多数あり。

長編小説「陸王」~あらすじ~

足袋メーカーの社長、宮沢は、百貨店に足袋を置いてもらおうと、営業に出かけるが全て空振り。そんな中、娘の茜からスニーカーを買ってきて欲しいとメールがはいる。

宮沢は営業先の百貨店で五本指の奇妙なシューズを見かける。店員に聞くと、裸足感覚で走ることができる人気商品らしい。それを手に取りあきれかえる宮沢だが……。

埼玉県行田市にある足袋専門店こはぜ屋は、百年の歴史のを有する老舗である。しかしその実態は従業員二十名の生活を背負う零細企業で、業績はジリ貧でまさに自転車操業。社長の宮沢は銀行から融資の引き出すのに苦心する日々を送っていた。

ある日、ふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋製造のノウハウを活かしたランニングシューズ「陸王」の開発だった。強引に社内にプロジェクトを立ち上げる。

素材探しや困難を極めるソール(靴底)開発という大きな壁にぶつかり、さらには大手シューズメーカーの妨害を受ける。この難局を乗り越えなくてはならないのだが……。

感想

個性的な登場人物が魅力です。宮沢社長筆頭に、就活中の長男の大地、妻の美枝子、事業に失敗した変人の飯山、メインバンクの融資担当の坂本、第一線から脱落しかけている実業家ランナーの茂木、縫製課リーダーのあけみ、勤続40年ベテラン番頭の富島、係長の安田、大手シューズメーカー営業部長の小原、上司の小原ともめているシューフィッター村野、上司の小原のコバンザメ佐山などが物語を盛り上げていきます。

宮沢の「全力でがんばっているヤツが、全ての賭に負けることはない。いつかは必ず勝つ」「理解してくれる協力者がいて、技術があって情熱がある」「ひとつの製品を作ること自体が、チームでマラソンを走るようなものなんだ」「金儲けのためだけじゃなくてさ、その人が気に入ったから、その人のために何かをしてやる。喜んでもらうために何かをする」等々の言葉が勇気を与えます。

事業に失敗した飯山の言葉にも重みがあります。「本当のプライドってのは、看板でも肩書きでもない。自分の仕事に対して抱くものなんだ」「人だよ、絶対に代わりがないのは。モノじゃない、人なんだ」「好きなことをやれ、見栄張ってカッコつけて、本当に好きでもないことをする人生ほど、後悔するものはない」

縫製課リーダーのあけみ、「あんたが失敗したって迷惑だとは思わない。失敗しない人間なんかいないよ」

宮沢の妻、美枝子、「たとえうまくいかなくても、いま頑張ってるからこそ、得られることだってあるでしょう」

毎回毎回、登場人物の振る舞いに感動しておりました。単純な人間なもので。

わたしは「小説すばる」をずっと購読しておりまして、池井戸潤の「陸王」は2013年7月号~2015年4月号までの連載でした。連載中は配達が待ち遠しくてしかたがありませんでした。

このような月刊誌での連載ものは、毎月連続で掲載されているとは限りません。楽しみにしている小説が次回は何ヶ月先です、などと最後に書いてあると「なんじゃい」ってな気分になります。いろいろ事情がおありなのでしょうが、読者にとってそんなことはどうでもいい話です。しかしこの「陸王」は毎月欠かさず掲載されていました。池井戸潤はさすが小説作家の鏡です。ますますファンになっちゃいました。

わたしの実感として、大御所といわれる小説家の連載ものは、毎月欠かさず掲載されていますね。だから人気があるのでしょうね。と勝手に解釈。隔月の連載ものでも、すっげーおもしろい小説はたくさんありますけど。

以下は、ネタバレ的要素がありますので、注意してください。

感動感動といいましたが、強いて「ん?」というところを申し上げるならば、大手メーカーってこんなに悪いヤツが部長になれるかなぁ、といったところ。また、救いの神の現れ方がちょっと唐突かな、というところです。

とは申しますが、読み進めていけば違和感は全くありません。まるでノンフィクションのように、物語はとてもおもしろいです。←どっちなんじゃい。

悪役は徹底的に悪役に徹しています。本当に憎たらしく描かれています。零細企業こはぜ屋に感情移入できます。

池井戸潤原作で高視聴率だった「下町ロケット」や「半沢直樹」に続く「陸王」も2017年10月に、TBS系日曜劇場で役所広司主演のドラマが始まります。