気象と天気の疑問 part48 ~台風は知っているけど、どうなって台風になるのだろう?~
赤道付近で熱帯低気圧から発達した台風は、夏に日本周辺に大きな災害をもたらす
赤道気団の内部で熱帯低気圧が発達して、最大風速が秒速34ノット (17.2m)以上になったものを台風といいます。
赤道付近では貿易風に乗り西へ進みます。地球の自転の影響によるコリオリ力(りょく)によって北へと進路変更して、日本周辺の中緯度まで北上してくると、今度は偏西風に押されて北東へと進んでいきます。

夏に太平洋高気圧が日本の南海上へ広く張りだすため、その高気圧のへり(端)に沿って進むようになります。そのため、8月から9月は日本周辺に、多くの台風が近づいてきます。この時期は太平洋高気圧が偏西風を北に押し上げているので、台風が偏西風に流されないで、迷走する場合があります。台風の進路予想が困難になるのはこのせいです。最近では予想精度があがってきています。
熱帯低気圧が発達して大きな積乱雲となったものが台風です。気象観測衛星が撮った写真を見ると、反時計回りに渦を巻いていることがわかります。その中心には雲がなく、台風の上空から地上がのぞける穴があります。これが台風の目です。
台風の目の周囲の雲は高い壁のようになっています。台風へ流れ込む風は、この目の壁雲の中をらせん状に、反時計回りで回転しながら上昇します。
対流圏界面まで上昇した風は台風の目を伝って、こんどは時計回りに吹き始めます。下降気流が台風の目の中にできているので、一時、地上ではおだやかな天気となります。しかし、台風の目が通過すると、ふたたび激しい雨と風がおそってきます。
最近の台風は強力になっている
台風は巨大な積乱雲のように見えますが、詳細に観察すると、小さな積乱雲がたくさん連なったものであることがわかります。
積乱雲の渦がいろいろな方向に延びるために、台風の中心から遠く離れたところでも、強い雨が局地的に降ることがあります。
暖かい海水が熱帯低気圧にエネルギーを供給します。赤道周辺の海水の温度が26Cを超えると、水蒸気が多く供給されるため、熱帯低気圧は台風へと発達しやすくなります
これまでは、北上にしたがい海水の温度が抵下し、それにともなって供給されるエネルギーが減るので、台風は勢力を弱めていきました。
ところが温暖化の影響のせいもあり、最近は日本近海の黒潮の海水の温度が上がっているため、今までであれば、日本付近で弱まっていた台風がなかなか弱まらず、強い勢力のまま日本周辺を通過したり上陸するせいで、大規模の災害に見舞われることが起こっています。
日本は海に囲まれていますので、雨や風とともに注意しなければいけないのが高潮なのです。台風は巨大な低気圧ですから、その下は周囲よりも気圧が低くなります。気圧がlhPa(ヘクトパスカル)に低下すると、海面は1センチ上昇します。もしも、5OhPa低下した場合の海面は50cmに上昇します。
満潮時にそれが重なったりした場合には、海水が堤防を越えて浸水し、災害を引き起こすこ可能性もあります。特に、台風の進行方向の右側にあたる、太平洋沿岸の南にある湾港などで、風が沖から陸に向かって海水を押すように吹くので、十分な警戒が必要です。
台風の場合、あなたが進行方向の右側か左側にいるかはたいへん重要なポイントになります。
台風の右側では、台風の強い風に加えて、台風を動かす太平洋高気圧のへりを流れる風が加わるせいで、いっそう強く吹くことになるからです。そのために船舶などは、より安全な左側へ避難することが必要になります。
台風の進路予報図に細心の注意を払う
台風は大きな災害をもたらす危険性がとても高いです。従って予報は非常に重要であり、気象を予報するものにとっては、もっとも重要なテーマとなります。
気象庁では、台風の強さと大きさを表示するための基準を設けており、強さは風速で、大きさはその半径で表しています。「強い台風」といった場合には、最大風速力秒速33-44m、「非常に強い台風」が最大風速が秒速44-54m、「猛烈な台風」になりますと、最大風速は秒速54m以上となります。
「大型の台風」とは、風速が秒速15m以上の強風域の半径が500キロメートルから800キロメートル、それを超えたものは「超大型の台風」と呼ばれます。
台風の進路予報図とは、台風がどんな進路をたどるかを予想したものです。この予報図には台風の12時間後、24時間後、48時間後の予想位置が円で表示され、さらに秒速25m以上の暴風が予想される暴風警戒域も表示されています。台風が接近してくるようなときには、こまめにチェックしたいものです。