当たり前ですが、雪が降らない山は、樹氷はできません
樹氷は、シーズンになると東北地方から中国地方のスキー場や雪山、あるいは九州の中央部の山地でも見ることができます。
樹氷とは、冬の季節風が運ぶ過冷却水滴(氷点下以下に下がっているにもかかわらず凍らずに水のままでいる水滴)が樹木に衝突した衝撃で凍結し、枝に付着したもので、樹木全体に氷の葉が生えたように見えます。
気温がマイナス5℃を下回ると樹氷が現れるようになります。付着する水滴は、樹氷の上に次々と重なっていくので、風上の方向へ向 に向かって樹氷は成長していきます。
その姿がエビ似ているためエビのしっぽと呼ばれます。
樹木にぶつかった過冷却水が結氷し、風上に向かって成長していくと樹氷になる
樹氷が見られるところでは、風が同じ方向から、強く吹きます。また、積雪量が、樹木を埋没させない程度の適度な量であることも、大切な条件となります。
樹氷に成長していく過冷却水は、その中にたくさんの気泡を含んでいるため、白濁したもろい氷です。そのため、 木をゆすると樹氷は簡単に落ちてしまいます。
樹氷は、細かい針のような葉をもつ常緑樹(じょうりょくじゅ)でよく成長します。
樹氷のなかでも、山形と宮城の県境にある蔵王の樹氷は、その姿が見事なために特に有名ですね。蔵王には広大なアオモリトドマツの森があり、そこに樹氷ができます。
これが成長していくエビのしっぽのすき間に雪が入り込んで固まり ます。これを焼結(しょうけつ)といいます。
この着氷(ちゃくひょう)から着雪(ちゃくせつ)、焼結(しょうけつ)を繰り返すことにより、蔵王の樹氷群ができあがります。
蔵王と同じ樹氷群は、八甲田山や八幡平などの奥羽山脈の標高1500メートル前後の森でも見ることができます。
蔵王の樹氷が見事になるには下記のような条件があります
- アオモリトドマツが自生していること。
- 雪が降りすぎないこと(雪が降りすぎるとアオモリトドマツは自生できません)
- 強い西風が吹くこと。
- 山の西斜面は風がスムーズに昇っていけるようになっていること
蔵王は、これらの条件を満たしているために、あのすばらしい樹氷ができるんです。