桜の開花と花冷え
春の訪れを実感させる桜の開花は、1月に開花する沖縄は別としまして、3月下旬の九州、四国の一部地域から始まり、順次北上して、5月中旬に北海道に到達します。
桜の開花は、各地の気象台が定めた、標準木が数輪開いた状態の、最初の日として発表し、同じ日に開花した地点をつないで、桜の開花前線として発表されます。
この桜前線を見て、本格的な春の到来を実感する人も、多くおられるのではないでしょうか。
こうした草花や樹木の開花などを観測することを、植物季節観察といい、樹木ではほかに、楓(かえで)や梅などの、観察も行われています。
通常、桜よりも寒い時期から咲く梅が、北海道においては、桜とほぼ同時期に開花することが知られています。
これは北海道の気温が、5月ころになると、一気に上昇するためです。
桜の花が咲く頃は、空模様がはっきりせず、薄曇りになったり、気温が上がらずに、寒さを覚えることがあります。
これが、花冷えや花曇りで、桜の見頃に水を差すものですが、これは、春の、周期的な天気変化にすぎません。
春先は、移動性高気圧がもたらす晴天や、南からの風が吹いて、暖かくなった後には、低気圧や前線が接近するため、天気が崩れるといったサイクルを繰り返します。
薄曇りのはっきりしない、空模様の花曇りは、低気圧から伸びている、温暖前線に伴う高層雲によって、引き起こされることが多く、高層雲を通過して見る月が、おぼろ月です。
花冷えの原因のひとつが、シベリア寒気団です。
移動性高気圧に覆われると、天気がよくなりますが、晴天による冷え込みに加え、シベリア寒気団の影響を受けて、気温が下がります。
シベリア寒気団が張り出して、冬型の気圧配置になったり、その一部が移動性となって、日本上空にくると、寒さが、ぶり返します。
高気圧が北日本を覆うと、本州の太平洋側に、冷たい北東気流が入り込み、天気の悪化や、気温の低下を招く場合もあります。
五月晴れ – 帯状の移動性高気圧がもたらす心地よい天気
5月は1年の中で、最も心地よいと感じる時期でしょう。
晴天が何日も続き、暑くなく寒くなく、快適に過ごすことができます。
旧暦の5月は、梅雨の時期にあたり、そのために、五月晴れは、かつては梅雨の晴れ間のことでしたが、新暦に変わって以降は、現在のように、5月の爽快な晴れを指すようになりました。
五月晴れをもたらすのは、この時期に多く発生する、東西に長い形の移動性高気圧です。
移動性高気圧のすぐ後ろの、次の移動性高気圧が、連なってやってくることもあります。
このような帯状高気圧の下では、数日間にわたり、晴天が続くこともあります。
人間にとっては快適な天候ですが、快晴の次の夜は、気温が急激に下がり、遅霜が降りることがあるため、農作物には注意が必要です。
これは、地表の熱が、雲などによって、妨げられることなく、急速に放散してしまう、放射冷却によるものです。